事前にニコに教えてもらった、
殺しにはうってつけの場所だ
彼方
……急にどうした? こんなとこに用事なんてないだろ
真冬
……
真冬
(“谷橋朝陽”……。)
真冬
(っ、やっぱり、どう見てもそらるさんにしか……)
彼方
まふまふ?
真冬
(元々ボクらは赤の他人で、そらるさんの依頼で相方をしてただけで……)
真冬
っ……
覚悟を決めて振り向いて、
渡されていた銃をそらるさんに向ける
彼方
……!
彼方
……まふまふ?
真冬
貴方の“願い”はここまで。今日をもって終わりとさせていただきます
彼方
何で急にそんなこと言い出すんだよ
真冬
……それは言えません
彼方
あー……うん、大体理解した。そういうことなら仕方ないか……
真冬
殺される心当たりでも?
彼方
まぁ、色々やってきたからね
真冬
……じゃあ、これは?
彼方
あ〜、何だっけ……あ、“谷橋朝陽”の時か
真冬
……貴方、何者なんですか?
真冬
少なくとも、表の世界の人間ではないですよね
彼方
まぁ、流石にそれ割れたらバレるよな。
彼方
……“一ノ瀬彼方”も本名ではないし、“谷橋朝陽”なんて人間も存在しない。
彼方
本名なんてもう忘れたよ。……いや、元々俺に名前なんてなかったのかもしれないけど。
彼方
……“同志”って言ったら、分かる?
真冬
っ……!?
真冬
……スパイ、ですか……?
彼方
まぁ、そういうこと。
彼方
“組織”には生まれて間もない頃からいた。だから根っからのスパイだよ
それなら、二階堂さんに聞いた
不祥事を暴いたことも、理解ができる
僕も……“俺”も昔、似たような
任務をしたことがあったから
真冬
(そういうことか……。)
真冬
(でもこの言い方は、こっちのことにも気づいてる……?)
彼方
正確には、“元”かもしれないけど……。
彼方
……どうする、それでも俺を殺す?
真冬
っ……
彼方
……っていうかさ。
彼方
こんな長いこと無駄話して、俺のこと殺す気ある?
真冬
っ!
真冬
そ、れは……
それにそらるさんは、短い間でも
こうして相方として仲良くなって、
一緒に遊んだりもして
昔の僕にできなかったことを、
沢山一緒にしてくれた
真冬
……。
真冬
っ……。
真冬
……殺したいわけ……。
真冬
っ……殺したいわけ、ないじゃないですか……!
真冬
だって、短い間でも相方になった人ですよ……!? そんな人を、殺したくなんてっ……
彼方
じゃあ殺らなきゃいいじゃん
真冬
それもできないんですよ!!
彼方
……何で?
真冬
っ……できないんです……!
彼方
“願い”を叶えなきゃいけないから?
真冬
……
彼方
……何か別の理由?
真冬
っ……
彼方
質問を変えるけど……。
彼方
お前が『何でも屋』にいたのは何で?
真冬
……貴方が“同志”なら、きっと似たような理由ですよ
彼方
は……?
彼方
じゃあ、まさかお前まだ……
彼方
ゔっ……!?
真冬
っ!?
僕は撃ってない、そらるさんの
背後から、誰かが……
真冬
(誰か……?)
真冬
っ……!! まさか……
ニコ
こちらの詮索は、ここまでにして頂きましょうか
真冬
ニコ……!!
ニコ
ダメでしょまふ、そんな長話してちゃ
真冬
な、何で、ここに……だって、この依頼はボクがやるんじゃ……!
ニコ
まふにこいつは殺せない。そう思って来たらその通りだったから。
ニコ
別に誰が遂行しようが構わないし、まふの代わりに俺が撃っただけだよ
真冬
(だからって、そんな簡単に引き鉄を引くなんてっ……)
真冬
っ……何でニコは、そうやって人を撃てるの……?
ニコ
さぁね。……それよりまふ、いいの?
真冬
何が……
ニコ
そいつ、まふの両親の仇だよ?
真冬
は……?
真冬
そんなわけない!! だって、父さん達はっ……!
ニコ
あぁ、うん、そうだよね。
ニコ
だってまふは……。
ニコ
自分で家族を殺したんだもんね