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テラーノベル(Teller Novel)

〜百瀬 side〜

約1時間の航行の末、 とうとう目的の壱岐島に着く

百瀬

(……って、もうこんな暗くなってたのか……)

時間帯はまだ夕方だけど、 流石に冬前のこの季節となると、 やっぱり陽が落ちるのが早い

百瀬

(今日は一旦どっかホテルの部屋取るか……)

港の近くでちょうど良さげな 宿を見つけて、今夜はここで やり過ごすことにする

百瀬

(明日は、本部の方に行って、それで……)

ベッドの上に寝転がりつつ、 明日からのことを考える

本部の場所と行き方は、 車で七瀬姉さんに聞いたから大丈夫

百瀬

(後は……)

百瀬

……ふわぁ……

百瀬

(いいや、明日のことは明日考えよ……)

とりあえず、今は休むか

ここまで相当な長旅だったから、 身体も疲れてるはずだし

百瀬

おやすみぃ……

翌朝

ホテルで朝ごはんを食べた後、 部屋に戻ってくる

百瀬

(魚めっちゃ美味かったなぁ……)

コンコンッ

百瀬

ん……?

本部で向かう為に軽く手荷物を まとめていると、不意にドアから ノックが聞こえた

百瀬

はい

返事をしながらドアに向かって、 ガチャリと開ける……と、 そこには従業員の人がいた

従業員

突然失礼致します。お客様、鳴海百瀬様で合っていますか?

百瀬

はい、合ってますけど……

従業員

現在1階のフロントに、“ナルミマナセ”と言う方がいらっしゃっておりまして……

百瀬

(え、鳴海……?)

従業員

その方からお客様へ、『お迎えに上がりました』と伝言を預かっているのですが……

迎え……何か、聞いただけで 既に怪しそうだけど……

百瀬

……分かりました、すぐ向かいます

まとめた荷物を持ってフロントに 降りてくると、そこにはスーツを 着た知らない男の人がいた

???

百瀬様、お待ちしておりました

百瀬

えっと……?

???

あぁ、ご挨拶が遅れましたね。

真瀬

私は鳴海真瀬と申します。現在、鳴海家の使用人をしている身です

自己紹介の後、丁寧なお辞儀をされる

百瀬

(鳴海……の、使用人?)

真瀬

鳴海一族は、現在多くの子孫が存在している為、本家にお仕えする家系もありますので

百瀬

え、あ、そうなんすね……

俺が疑問に思っていると、 心を読んだようにそう答えられる

百瀬

(か、顔に出てたか……?)

真瀬

百瀬様のことは、東京支部を通して耳にしています。それでは早速ですが、向かいましょうか

そうしてホテルの外に停めてある 車に案内された後、山の中へと 進んで、大体30分ほど

百瀬

ここが……

和風な門に、表札には“鳴海”の2文字

ここが、鳴海の総本山、鳴海家本部

真瀬

どうぞこちらへ

真瀬さんについて、門をくぐる

百瀬

(うわ、何だここ……!?)

広い庭に、門の先には日本家屋の屋敷

長崎のじいちゃん家も大きいけど、 ここは比べ物にならないほど

真瀬

百瀬様にはこれから、鳴海家総代の“瀬様”に会っていただきます

屋敷の中に入って廊下を 歩いていると、真瀬さんに そう説明される

百瀬

らい様……?

鳴海家総代ってことは、この家系で 一番すごい人じゃねぇか……?

百瀬

(そんな人とまともに会話できるかな……)

真瀬

ご安心下さい。総代様は気難しい方ではございませんので、最低限の無礼にさえ気をつけていただければ大丈夫ですよ

百瀬

あ、はい

百瀬

(あれ、また俺顔に出てたかな……)

不思議に思いつつ歩いていると、 とある部屋の前で、真瀬さんが止まる

真瀬

こちらの奥に、総代様がいらっしゃいます

そう言った後、襖に向かって 真瀬さんが声をかける

真瀬

総代様。百瀬様をお連れして参りました

ありがとう。どうぞお入り下さい

中から聞こえたのは、意外にも 若い女性の声だった

真瀬

百瀬様、どうぞ

百瀬

は、はい

真瀬さんに襖を開けてもらって、 部屋の中へと入る

広間のようなところで、奥には 一段上がった場所がある、時代劇 なんかでよく見るような構造の部屋

そしてその一段上には、 さっきの声の主が座って……

百瀬

(……って、え……?)

お初にお目にかかります、百瀬さん。改めてご挨拶を

私は、現鳴海家総代、鳴海瀬と申します

着物の裾を翻して、 丁寧に挨拶をする彼女

……まず驚いたのは、“その子”の若さ

高校生とか、下手したら 中学生くらいの……でも確実に、 俺よりも年下の子だった

百瀬

(それに、あの目隠し……)

紫の目隠しをしているにも関わらず、 しっかりと俺を捉えているし、 何故だか視線らしいものも感じる

百瀬

……あっ、俺は鳴海百瀬です

はっとして、衝撃で忘れかけていてた 自己紹介をする

それでは、どこから話しましょうか……。

あぁ、ではせっかくなので、私の話でも。百瀬さんも気にしていらっしゃいますよね

百瀬

あ〜、まぁ、はい……

ふふ、と笑ってから、こう話を始める

実は、私がこの座を継いだのは、つい数ヶ月前のことでした。

全てが終わった、6月30日。百瀬さんも、この日付には心当たりがありますよね

百瀬

あの予言書の……ですか?

はい。全てが終わった後、病にかかっていた父の容態が急変して……

百瀬

(あ、そういう……)

──という、わけでもなく

百瀬

えっ? は、はあ……

ふふっ、病気にかかりがちなのは事実ですが、その日も父は変わらず元気にしていました。

ですがその日、父は私に、このようなことを言ったのです

『今日は鳴海の節目だ』

『私はその節目の終わりの代として、 新たな時代を迎えるべく、今日を もってこの座を降りようと思う』

……そして、後のことは、後世の私達に任せる、と。

そんな経緯で、私は齢十六にして、この座に就くこととなりました。

そして約3ヶ月が経ち、今に至ります

百瀬

(それで、こんな若くしてデカい家の総代に……)

鳴海家にとってあの予言書は、 俺が思っていた以上に、 相当重大な代物だったらしい

次は……そうですね、この目隠しについて。

ところで百瀬さん、貴方が本部を訪れた理由についてですが……。

……“BoEとは何かを聞く為”。そして、“自分の家の事を知る為”。

これらが理由ということで、合っていますか?

百瀬

え……な、何で……?

ピタリと目的を当てられたことに、 つい驚いて目を見開く

百瀬

(あっ、もしかして、七瀬姉さんが連絡入れてたとか……)

では、どのようにして真瀬は貴方の泊まっている宿を突き止めたのでしょうか?

百瀬

え……?

あれ……さっきの真瀬さんみたいに、 また何か心を読まれたような……

百瀬

(偶然……?)

……ふふっ。

それだけではありませんよ、百瀬さん。ここに着くまで、不思議なことはありませんでしたか?

百瀬

不思議な……?

例えば、そうですね……“心を読まれる”、だとか

百瀬

え……

……ここまで送ってくれた真瀬さんと 会話してる時、確かにそんな風に 感じたことが何度もあった

それに、ついさっきも、この人に……

百瀬

(最初は全部、顔に出てたのかと思ったけど……)

実はこれらは全て、この鳴海の血筋が関係しているんです

百瀬

血筋が……?

はい。……そうですね……せっかくですし、少し外を散歩しましょうか

魔法使いは何を唱う? -紫苑の叛逆者-

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コメント

2

ユーザー

おおお……また新キャラが増えてきた… 使用人の『真瀬』さんと『頼』さん… 頼さんに関しては16歳で鳴海家の総代に… そして頼さんや真瀬さんも心が読めて それは鳴海家の血筋??? 鳴海家の本部…すごいなぁ なんかそうとうすごい話になりそう… 次あたりの話から明らかになるのかな? 続き楽しみにしています!!!!!!!

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