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私は親友を見殺しにしました

私は親友を見殺しにしました

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私は親友を見殺しにしました 第1話

♥

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2020年07月03日

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ハナ

(…いつもの、夢だ)

ツムギ

ハナ!

ハナ

(ツムギ…、来ちゃだめ…!)

ツムギ

ハナ!お待たせ!

ハナ

ツムギ、車が!!!

ツムギ

ハ――

ドンッ!!!

ハナ

――ツムギッ!!

ツムギ

痛い…

ツムギ

動けない…

ハナ

――……!

ツムギの手が、私の腕を強くつかんだ。

強く、強く、強く…強く。

ハナ

ツ、ツムギ…

ツムギ

『犯人の顔を見てないの?』

ハナ

…その…

ツムギ

『キミしか目撃者はいないんだよ』

ハナ

ごめんなさい…

ツムギ

『友達なのに、見殺しにするんだ』

ハナ

そんなつもりは…っ

ハナ

私が…見殺しに…した…?

ハナ

目が…さめた…よかった…

ハナ

…ん?暗闇レストラン?

ハナ

…あ、レビューがある

ハナ

『ここに招待されて、トラウマが解消された』

ハナ

『料理もおいしいし、
暗闇の中でみんなで過ごすことでかけがえのない体験が出来た!』

ハナ

トラウマ…

ハナ

…もし、これに私が参加したら…

ハナ

…………

―都内某所・レストラン前―

ハナ

…あれ?

ハナ

もう人がいる…

ツキヒコ

あんたも招待されたのか?

ハナ

そうです

ツキヒコ

オレもだ

ウェイトレス

ようこそ、暗闇レストランへ

ウェイトレス

ここから先は暗闇、何も見えない場所

ウェイトレス

今日のゲストのみなさまがお待ちです

ハナ

他にも人がいるんだ…

ウェイトレス

どうぞ、
私の手を離さずに、お進みください…

ーレストラン・ホールー

オーナー

さぁ、みなさま。ようこそ我がレストランへ

ハナ

(わっ、本当に真っ暗…!)

スピーカーから声がする

オーナー

今日は5名のお客様のために

オーナー

スタッフ一同心を込めて準備をいたしました

オーナー

ごゆっくりお寛ぎください

ガタゴトと椅子が動く音がする

オーナー

では、ひとりひとりお名前を呼びます

オーナー

名前を呼ばれたら自己紹介を

ツキヒコ

なんでそんなことしなきゃならないんだよ

オーナー

同じテーブルを囲む仲間ですよ

オーナー

知りたいでしょう?

オーナー

ねえ? ツキヒコくん

ツキヒコ

…………

オーナー

イマヤシキさん

イマヤシキ

…はい。専業主婦をしています。

オーナー

クラシナさん

クラシナ

クラシナです。新人漫画家です

オーナー

ナガヤマさん

ナガヤマ

よろしくお願いします

オーナー

最後は、ハナさん

ハナ

ハナです。
よろしくお願いします

オーナー

年齢も住所もバラバラのみなさまにも、ある共通点がございます

ナガヤマ

共通点…ですか?

オーナー

はい

オーナー

お心当たりはございますか?

ハナ

(…年も性別も違うし…なんだろう?)

ハナ

(まさか…あのこと?)

イマヤシキ

まさか、全員、子供を失ってるんですか?

クラシナ

僕、未婚です

ツキヒコ

オレもまだ未成年

ハナ

私も

ナガヤマ

私は子供はいるのはいますが…

イマヤシキ

そ、そうなんですね

イマヤシキ

私はてっきり、みなさんもそうなのかと…

イマヤシキ

イマヤシキ

うっ…ごめんなさい、涙が

ナガヤマ

話をしてみてはいかがですか?

ナガヤマ

知らない人だからこそ話せる

ナガヤマ

そういうこともたくさんありますから

――2年前――

メイ

ママ!
早く早く!

イマヤシキ

メイ、待って!

メイ

ママ、遅い~!

メイ

『キラ☆ピュア』のわたあめ、奥の屋台にはあるって!

イマヤシキ

はいはい

イマヤシキ

人がいっぱいなんだから、手を離しちゃだめよ

メイ

あっ、ママ、見て!

メイ

あっちに『キラ☆ピュア』のおもちゃがある!

イマヤシキ

ちょっと、手を離さないで!

イマヤシキ

メイ、待ちなさい!

イマヤシキ

返事をして!

イマヤシキ

メイ!!

おい、メイは?

イマヤシキ

どこかに走って行っちゃった…!

なんだって!?

イマヤシキ

『キラ☆ピュア』のおもちゃがあるって

イマヤシキ

メイ!

ガヤ…

ガヤ…ガヤ…

小学校1年生くらいの女の子を見ませんでしたか!?

ピンクのユカタで、頭に星のヘアバンドをして

店番

ああ、さっき来ましたよ

誰かと一緒でしたか!?

店番

…さっき、20代くらいの男の人と一緒でした!

イマヤシキ

そんな…ッ!

どっちの方向に行ったか分かりますか?

店番

あっちです!

店番

俺も一緒に探しますッ!!

ガヤ…ガヤ…

イマヤシキ

…ごめんなさい。
私がメイから目を離したばっかりに

イマヤシキ

あの時ちゃんと私がメイを見ていたら

…………

毎日毎日、自分のせいだって謝ってれば気が済むのか?

そんな事したって、メイの手がかりは見つからないんだ

意味無いってお前も分かってるだろ!?

イマヤシキ

まだ生きてるかもしれない

イマヤシキ

この間だって高校生が拉致されたけど自力で逃げ出したって

お前、本気で言ってるのか

イマヤシキ

…あなたも本気?

イマヤシキ

メイがいなくなって、平気なの?

平気なわけないだろ!

でも、お前は2年間、毎日毎日同じことを繰り返す!

その方が気が狂いそうだ!

イマヤシキ

だって私のせいで…!

お前のせいじゃないって何回言えばいい!?

何万回言ってもわかってくれないだろ!?

イマヤシキ

だって…!

…俺たち、しばらく距離を置いたほうがいいよ

実家から会社に通う

疲れてるんだ…

イマヤシキ

…………

今でも、祭りの音が耳の奥にこだましている。

イマヤシキ

これで、私の話は全てです…

ハナ

(娘さんが誘拐されて、旦那さんが出て行った…)

ナガヤマ

勇気をもって話して下さいましたね

ナガヤマ

オーナー

オーナー

はい、なんでしょう?

ナガヤマ

分かりました。私たちの共通点

ナガヤマ

全員何らかの犯罪に巻き込まれたことがある

ナガヤマ

違いますか?

オーナー

ご明察です

オーナー

私は、みなさんを無作為に選びました

オーナー

新聞、ウェブメディア、まぁ、少し探偵も使いましたが

オーナー

それだけです。法律に反してはいません

ハナ

…………

ハナ

(でも、私たちのことを調べたってことは間違いない…)

オーナー

このレストランは暗闇

オーナー

みなさんの心のうち、そのものです

オーナー

私は人間を信じています

オーナー

みなさんが自分の傷と向き合い、心の闇を晴らすこと

オーナー

それを願っています

オーナー

さぁ!では、まず乾杯をしましょう

オーナー

乾杯!

ハナ

…乾杯

――暗闇のなか、 グラスの鳴る音が、妙に軽やかに響いた。

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