空はパイモンがそろりと、音を立てず飛び去るのを見送る。
(きっと助けを呼びに行ってくれたんだ。)
確信する。目の前の蛍術師にばれないよう、安堵する。
(俺もなにか力にならないと…)
空は地についていた膝を立てた。蛍術師の口が止まり、深い笑みをつくる。
「いいわね~。ここで終わらせましょうか?」
空は無言だ。今空はなんとか立っているが、口からは血が滴り落ちており、全身から冷や汗が吹き出している。心なしか体温も上昇しているように思える。それでも…
(このままなにもできないまま終わらせない!)
それは空の固い意志。今にも倒れそうな空をささえる強固な杖。
空はもう一度剣を構え、蛍術師を見据える。蛍術師はもう笑っていなかった。
先に攻撃をしかけたのは蛍術師だった。目にも止まらぬ速さで空を狙う、閃光のような雷だ。
しかし空も負けていない。咄嗟にそれを避け、剣を蛍術師に向かって振る。技量は当然空が上だ。蛍術師の頬を空の剣が掠める。蛍術師は驚愕を隠せなかった。
はっきり言って、常人なら死んでもおかしくない状態なのに、空はまだこんなにも戦えるのか、と。しかし蛍術師も負けない。己の使役する雷蛍を召喚し、一気に仕掛ける。
「ぐぅっ…!」
空がくぐもった声をあげる。腕に足に、雷があたり、血が吹き出す。口も、声を出したせいでまた痛んだのだろう。空の顔は苦痛に歪んでいた。
それでも空は剣を振る。
勝機を探して。
コメント
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めちゃくちゃすきです!!!!