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「 今日は、猫を、見ました 」
「 ど、聞こえる? 」
と、糸電話越しに話す凪。
糸電話を貰ってから2週間。
この糸電話は皆で作った物らしい。
「 すっごい聞こえる ( 🙌🏻 」
「 潔ーッ!喉大丈夫ーッ!? 」
「 大丈夫大丈夫 ( 🙌🏻 へら、 」
声を出したくないが為に、” 喉が痛い “ と嘘をついた。
皆はそれを信じて心配してくれている。申し訳ないけど、声を出すよりちょっとマシだ。
最近はノアとだけちょっと話す様になった。
話す練習をしているからか、前よりは少し話せる様になった。それでも皆の前で話す事は無い。
「 早く治るといいねー!話したいし… 」
「 おう!俺も話したいな! ( 🙌🏻 」
嗚呼、まただ。
皆の笑顔を見る度、嘘をつく度に胸が痛くなる。
こんな俺、必要としてないんじゃないかって。
そんな事ばかりに頭が回る。
「 世一?大丈夫か? 」
「 ( ぼー、 」
皆本当は俺なんて必要としていなくて、
只々サッカーに置いて邪魔な存在で、
” 早く辞めればいいのに “ 、って、
そう思っている気がして不安になる。
「 おーい、世一ぃ? 」
と、目の前にはコート上の緑の草ではなく、綺麗な顔立ちをしたカイザーが現れる。
「 ぉわッ、 」
「 何だ、声出せるのか 」
きょとん、とするカイザーを横目に、俺は後悔の渦に巻き込まれていた。
もし声が出ない事が嘘だとバレたら。
もし、蜂楽達に本当の事が知れたら。
俺はこの仲間達と、一緒に居る事でさえ自ら諦めるだろう。
「 黄頭ー? 」
カイザーが蜂楽を呼ぶ声が聞こえる。
「 … ────── ょ、 」
「 ?どうした? 」
「 余計、な、せぁッ!! 」
…と、勢いのまま声を出してしまう。
” 余計な世話だ “ 、と。
きっと皆には伝わってない。声が頭に響いて耳鳴りがする。
最悪だ、勝手に嘘ついて、勝手に後悔して、勝手に怒って…俺はどこまで最低なんだろう。
しーん、と静まり返ったコート上を見て、俺は一言。
「 …ぉめ、 」
” ごめん “ 、と呟く。
蜂楽は驚いた様な表情で俺を見ている。
他の皆も、全員俺を見ている。
なんて思ってるのか、なんて分かりきった事だ。
きっと ” 気持ち悪い “ やら ” 何コイツ “ やら思っているんだろう。
この空気が嫌で、気持ち悪くて、吐きそうで。
俺は走ってコートを出た。
「 おい潔世一、入るぞ 」
それから十数分後、ノアがやって来た。
俺は今、前過ごしていた個人部屋に居る。
「 …何があったんだ? 」
「 …別に、 ( 🙌🏻 」
俺はベッドの上に座り込んで、枕を顔の前に持って来ている。枕を抱き抱える様にして、手話をしている。
ノアはベッドの端っこに座って俺の方を向いている、っぽい。
「 声を出せ、潔世一 」
「 ( 首振 、 」
「 …何があったかと聞いている 」
「 …俺が勝手に怒った、 ( 🙌🏻 」
「 そうか、聞いていた話と違うな。 」
「 へ、 」
「 …黄色頭は ” 俺が潔を傷付けた “ 、 」
「 ミヒャエル・カイザーは ” 俺が悪い “ 、 」
「 と、言っていたが。 」
「 ちぁ、ッ 」
違う、そうじゃない。
俺が勝手な推測して、勝手に傷付いて、そうしてこうなってるんだ。
「 …お前は大きな勘違いをしている。 」
「 お前はアイツ等が嫌いか? 」
「 …すぃ、 ( 首振 」
「 それはアイツ等も変わらないんだ。 」
そんな事分からないだろ、と心底思う。
だけどノアの声は何時にもなく真剣で、重くて、本当の事を言っている気がした。
「 …まだ休養期間が要る様だな。 」
要らない、今はとにかく皆に謝りたい。
「 ぃや、いりまぇ、ッ 」
「 …取り敢えず2週間、休養期間とする。 」
「 いやれぅッ 」
「 この期間が終わり次第、お前の意見を聞いてやろう。 」
俺の所為で…俺の所為で皆に勘違いさせて、不安にさせて、困らせる。
ごめん、皆、
ごめん、ほんとごめん ─────── ッ
こんこんッ、
「 …潔、? 」
「 ……ごめん、ね 」
「 ん”…ッ、ぁぇ、? 」
誰かの声がした気がした。
…イヤホンもしていないし、恐らく気の所為だろう。だけど気になった俺は、それを確認してみる事にした。
時計を確認するとまだ3時。
小さく扉を開くと、扉の前に小さな手紙が幾つかと、黄色の綺麗な花が置いてあった。
「 …! 」
[ 潔、ごめん … 蜂楽 ]
[ 大好き、大好き … 黒名 ]
[ よいさ、すまない … ヵイザー ]
[ 潔君、ごめん、ありがとう … 雪宮 ]
[ 気持ち、何も変わらへんで … 氷織 ]
と、1つ1つ読んでいく。
俺は大きな、大き過ぎる勘違いをしていた。
そして、最低な事をしてしまった。
皆から貰った糸電話の糸が、ちぎれてしまったのだ。…正式には、ちぎった。
ノアが来る少し前に、ちぎってしまった。
と、そこへまた ─── 、
こん、こん、ッ とノックをする音。
「 …世一? 」
「 ひぅッ、 」
驚きのあまり声が出てしまう。
イヤホンをしていないとはいえ、ここは扉の前。
少しの振動でも感じる。
「 …入るぞ 」
「 ぁ、ぅ、ッ 」
「 …泣いたのか? 」
すり、と俺の目元を優しく触る。
その温度が気持ち良くて、心地好くて。
先程まで堪えていた涙が自然と溢れてくる。
何を言っているかさえ分からないが、優しい手の平だって事は確かだと思った。
「 ぁー…イヤホン、ないのか、 」
電気を付けて棚の上にあったイヤホンを取ってくれる。
「 イヤホン、つけろ ( 🙌🏻 」
とんとん、と自身の耳元を軽く叩いて手話をしてくれる。
「 ( こく、? 」
「 …世一、俺は誤解を解きにきた。 」
聞き慣れた優しい声が、俺の中に響き渡る。
ノアと話して俺の思っていた事は誤解だと分かっていても、いざとなるとやっぱり怖い。
── でもここで止まってしまえば、俺は進めずに一生止まる事になってしまうだろう。
「 …お願い、話して ( 🙌🏻 」
「 …俺は、世一が嫌いだ ─────── 」