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仮面を被った清純派(アイドル)

仮面を被った清純派(アイドル)

「仮面を被った清純派(アイドル)」のメインビジュアル

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恋愛シュミレーション ‐遂にお披露目だ‐

2024年02月25日

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数日経ったある日。今回は新曲の『恋愛シュミレーション』の収録日。なので、都内のレコーディングスタジオへ足を運んでいる所で、今現在電車に揺られている。前回の話で、西君から貰った猫ちゃんストラップに関しては、敢えて普通に仕事用のバッグに付けている。理由は休日用よりも、明らかに見る回数が多いからだ。これを見ると凄く力になるし、なんだってあの時の記憶が甦るからだ。

因みにこのストラップに付いては勿論メンバーから問い詰められた。嫌な意味ではなくてね。普通に「可愛い」や「何処で買ったの?」、「なんで片方なの?」とか。幸い怪しむ人が居なかった為、適当に

「駅で偶然面白いガチャガチャがあってね、一回で2回出来るんだけど、運が良ければお揃いが出るんだって。生憎片方しか出なかったけど、可愛いから記念に付けてる」

と。西君の言葉を借りてそうメンバーに話した。嘘ではあるが、話自体は事実なので私自身も自信もって話す事が出来た。

「もしかすると、既にもう片方を持っている人がいるかも知れないって事だよね?」

「あ!って事は、そのもう片方が運命の人だったらウケる」

有希の言葉に美希がそう話した。


一応、何かあった時に西君とは口裏合わせをしていて”仮にお揃いが見つかったとしても、偶然感を装う”ってね。まぁ見つかる事は先ずないと思うけど。


「そうだといいけど、そこのガチャって『小ネタガチャ』って書かれているくらい、しょーもないガチャガチャがあるので有名だから、面白半分でしていく人もいると思うよ?」

「そうだよね~、昔っからそこのガチャガチャってネタ要素豊富な物で有名だから、それ狙いで来てる人とかもいるかもね」

「期待しない方が良いか(笑)」

玖瑠美がそう纏めて話が終えた。以降はあまり触れる事無く今日まで来ている。

「あの~すみません」

スマホを眺めていたら同い年くらいの男性に話しかけられた。

「はい?」

私は一瞬ナンパかと思いながらも無視する訳にも行かずにそう返した。

「すみません突然、決して怪しい者ではなくてですね、そのバッグに付いているストラップが気になって」

まさかこんなに速くフラグ回収されるのか。今振り返った話をドンピシャでされるとは思わず、ドキッとしながもそのストラップを見せる。

「え、これですか?」

「はい。これ何処で買われましたか?」

「何処‥というか、そこの茶水駅(チャノミズエキ)のガチャですけど…?」

茶水駅ってのが私が普段仕事場近くの最寄り駅だ。その駅が小ネタガチャがある所でもある。するとその男性は

「やっぱりそうなんですね!これ、大学の友達がもう片方持ってて、そいつもそこの茶水駅のガチャで買ったって言ってたんですよー」


ムム!それはもしや西君の事ではないか?


私は瞬時にそう思った。これはやばいと私は咄嗟に顔を隠す。幸い帽子を深く被りマスクをしていた為、恐らく顔の全貌は見られてない筈。ていうかそもそも私がアイドルの1人というのは気付いていない様子。

彼はその友達に見せたいとの事で写真を撮っていいかを尋ねられる。まぁ写真だけならと、私はそのストラップを持ち、彼は空いている隣に座って写真を撮ろうとする。しかも”良かったら手も添えて貰えますか?そいつにこういう手の方だったよってワクワク感を出させたいので”とまさかの要望まで言って来た。彼はそれを撮りながら

「このガチャってもしかして、運が良ければお揃いが出て願いが叶う的なやつですよね?」

「そうですね。生憎お揃いではなかったんですけど、可愛かったので普通に付けているんです」

「へぇ良いですね。その友達も付けてるんですけど、そいつは、とあるアイドルが好きでその中でも推しが居るそうなんですけどね、ガチャをする時に付き合いたいって願いを込めてガチャしたらしいんですけど、貴女と一緒でお揃いが出なかったらしく、もしかしたらって薄い希望で付けているらしいんですけどね、いやいや、そんなワンチャンを狙うよりもっと現実見ろやって言ってるんですけねー」

彼は興奮しているのか、独りでに話し出す。恐らく聞く限りだと西君の事で、という事は西君の友達だと思われる。西君も西君で適当に話をしている事に、少し嬉しさと


付き合ってるのにな‥‥


と心の中でニヤ付きながらそう思った。そう言って写真を撮り

「ありがとうございました、彼には”女性の方が、もう片方持ってたけど、残念ながらアイドルの子じゃない”って言っときます」

彼はそう言った。どうやら本当に私がアイドルじゃないと思っている様子。


逆に捉えると、私はアイドル顔じゃないっていう風に聞こえてならないんだが。しかも、西君がそう言ってるのであれば、恐らくグループ名の事を知ってる筈なんだけど…


私は確認の為に聞いて見た。

「そのアイドルって有名な人ですか?」

「今注目のアイドルグループらしいですよ?rainbowって言ってたっけ?なんか虹っぽい名前だった気がします、あんま俺は詳しくないですけど(笑)」


やっぱり西君に違いない。そして偶然にもこの子はアイドルに興味ないせぃか、私の事をアイドルとは気付いていないし、そのファンの相手だと気づいていない。ラッキー!


私は、恐らくこの後もバレる事もないと思いつつ、彼が言っているのは西君の事だと確信に変わった途端、私が降りる駅が近づいて来た。話は良い所ではあったものの、私は”そうなんですね”と言い、この駅で降りる事を伝えてその場を後にした。改札口を出ると、既にマネージャーの島田さんが待っていた。私はそれに乗り込む。

「おはようございます」

「おはよう咲ちゃん、今日は収録だけど曲は覚えた?」

「はい。まだダンスが微妙ですけど…」

ウチ等は曲もダンスもクラウドサービスを使ってやり取りしている。先日菊池さん見本のダンスが届いた。その内容はアイドルとは少し掛け離れた感じの為、少し難しい。

「まぁ菊池さんのはアクロバティック系だからね、シェリミキは凄い得意そうだったけど」

島田さんは美希と連絡を取り合ってたのか、自身を持っていた様子。流石専門職だなと感じた。

「うん、だからダンスはシェリミキに聞こうと思う」

「そうね、今回のダンスは今までに無いものだから、逆に新鮮味があるからいいいと思うよ」

「確かにね、何気にシェリミキの分野は初めてだし」

そう言いながらスタジオに向かった。


目的地に付くと既に愛花と有希が来ていて、愛花の方の歌割りは終えていて休憩していて、収録場には有希が歌っていた。因みに収録は今日と明日に実施。本日はさっき言った歌割りという、グループ特有のそれぞれのパートがある為、その部分の録音を午前午後で2枠に別れてする。午前中は有希、愛花に私と、この後来る伊織。午後が残りという感じ。その間はダンス練習をし、入れ替わりって感じ。そして明日にハモリというみんなで歌う部分と、実際に横に並んで通しをする。

「お疲れ様でーす」「「お疲れ様です」」

そう言って中に入った。私は空いている席に座り、順番が来るまでスマホを弄ったり収録風景を眺める。歌う際はボイストレーナーがマジックミラー越しで気になる部分をマイクを通して指摘するシステム。

「どう収録?」

私は既に終えている愛花に聞いてみた。すると愛花は飲料水を飲みながら、

「ん?結構アップダウンがある曲だから、特に歌い出し部分を気を付ければ良いんじゃない?ユキリンもそこに手こずってるっぽいから。でも咲ちゃんの所はいつも通りで大丈夫だと思う」

「ここじゃない?」

そう言って歌詞の2番目サビに入るCメロがちょっと癖がある。因みに有希が1番のCメロ部分だ。

「そうここ!低い感じから急に180度高い感じを出さないといけないから難しかったし、また1番とちょっと違うから、どうしてもそのリズムになっちゃって」

「そっかー、今回の曲ダンスもそうだけど、曲もちょっと癖があって難しいもんね」

「うん、咲ちゃんも頑張って、先に休憩入ってるから、また後でユキリンと織ちゃんも居れてお昼しよ?」

愛花の言葉に”うん”と頷き、先にレコーディングスタジオを後にした。

遂に出番がやってきた。私のパートで言うと先ず1番に関してはAメロ最初の2フレーズとBメロの1フレーズにサビ。因みにサビに関しては明日一斉に歌うのだが、その前にみんなの歌声の調整の為に歌う事になっている。

「じゃーお願いしまーす」

そうボイストレーナーの方が言うとイントロが流れ出す。

「♪ある日の出来事 抽選で当たったそのチケット それは『好きなメンバーと一日デート券』でした♪」

そう歌い終えるとトレーナーから

「はいオッケー。凄く気持ち籠ってていい感じです。『抽選』の所の部分を、もう少し滑らかに歌えるかな?タン、タン、タンていう段階踏んでな感じじゃなくて、グーっと上がる感じで」

「はい」

私はそう返事をし、同じフレーズを歌う。その後も他の台詞部分も歌い直しを続けてサビへ。

「♪今日一日を 良い思い出に する為に プランを考えたんだ 朝は電車の旅変わりゆく 景色の中で この後の 楽しみを 話すんだ 昼下がりは 下車先のカフェで一服 恋愛シミュレーション♪」

「どうした今日?凄いじゃん!?かなり練習した?」

トレーナーから珍しくお褒めの言葉を貰う。メンバーの中で大体いつも時間を要するのが私。それもあってかあまり指摘がなく、いつもの倍の速さで進んでいる。

「そうですね。いつもと感じが違うからより念入りに」

そう私は答える。恐らく今の恋愛と合致するからか、自分でも分かるいつも以上に感情輸入して歌ってしまう私。それも相まっているんだと思う。

「そうだったんだね、強いて言うなら毎回言ってるけど段階ではなくて流れる様に歌う事かな?後は特にないかな?」

「わかりました、ありがとうございます」

そう言って歌い直しも含め、残り部分も歌ってラスト前のCメロ。実はここが私のソロパート。2番のサビを終えると、気持ち長めの間奏が入る。ダンスでもここが一番の見せ場となっている。間奏が終わると一気に静かになり、

「♪一人の時 ふと考えるんだ。君と僕とでは 不釣り合いなのかも知れない… それでも君の 笑顔を いつまでも守り続けたい♪」

そう歌いきるとマイク越しに聞こえる拍手の音。どうやら周りがしている様子。その拍手と一緒にトレーナーが話し出す。

「ねぇ本当にどうしたの?直す部分はあるけど、それ抜きでなんか感情が凄いね」

凄く驚きを見せるトレーナー。そして反応から、周りも同じ事を思っていると思う。あまり実感がないが、可能性の範囲をトレーナーに向けて話す。

「恐らくですけど、ちょっと個人的に趣味で漫画を読んでる影響と後、この部分てデートの終盤で一瞬我に返る所だと個人的に思ってて、語尾のそれでも守り続けたいっていうなんかこう、気持ちに抗う的な感じを自分なりに意識的にしようと思ってですね」

そう言うと納得した様にトレーナーが

「なるほどね。今ね、指摘部分を言おうと思ったんだけど、丁度ここに島田さんとユキリン、それに織ちゃんが居るんだけど、そのままが逆に良いって言う声があるから、敢えてそのままにするよ。多分その方が無闇に直すよりいいかも」

と、トレーナーからまさかの1発オッケーに私は驚きながら、

「え!マジですか⁉1発オッケーなんて初めてだからめっちゃ不安なんですけど」

「大丈夫。何も考えずに貴女の気持ちでそのフレーズを歌って欲しい。女子の私達でさえグッと来るものが伝わるんだから、恐らくファンにもこの気持ちが伝わると思うよ」

「わ‥かりました」

あまり納得していないが、プロが言うのならと渋々了解した。その後はラストサビ、そして最後の話し言葉で言う『今日はありがとう、また遊ぼうね』の部分。これに関しては、今までサポートしてきたファンの人に対してそれぞれの感謝の想いを伝えるという意味もあり、各自のありがとうを伝える様にと言われた。その中でもトレーナー曰く、私の言葉が現状トップらしい。

そんなこんなでいつもより30分くらい早めに終わり、伊織と交代した。伊織も今回の曲は結構練習したという事で早めに終わり、全体の予定よりも1時間近く早めに終わった。午後のダンス練習まで時間があるので、みんなでお昼をする為に先に終えていた愛花と合流する事にした。


場所は最近出来た『デリシャス・ザ・コーヒー』という映える珈琲店として最近話題で、何より有難いのが個室型になっている為、あまり人目を気にせず食事が出来る事。私達はそこで軽食を食べる事にした。

「いらっしゃいませ~、何名様でしょうか?」

「4人でお願いします」

そう言うと奥に通され、席に着くや否や食いしん坊の有希から話が始まった。

「ねぇねぇねぇみんな何食べる?」

「私ここに来る前から決めてるんだよねー」

「あ!それって期間限定のふわとろミルクバーム?」

「あーそれもだけど、ご飯の期間限定のやつで…」

「みんな?昼から稽古だというのを忘れないようにね」

そういう女子ならではの会話が始まる。私達は仕事仲間でもあり、純粋に友達と言っても過言ではない。ここだけに限らずみんなね。因みにメンバーの中で一番話すのは玖瑠美。リーダーっていうのもあるんだけど、チームになる前に一番相談に乗ってもらっていた先輩でもあるから、一番は玖瑠実かなって思う。来店してから30分以上の経過した頃。ある程度食卓が並び、中には食後のデザートを頼む人もいる。そんな中でアイドルだかこそなのか、恋愛話に発展する。

「最近のみんなのイケメンランキングはどうなの?」

伊織から私に話を振って来た。

「私?どうだろうなー?」

「そう言えばさ、前に結婚式の撮影の時の人とかどうなの?初ライブの時のイケメン君だったんでしょ?」

有希がそう言った。メンバーにはウェディング撮影の際、以前に握手会の時に初めて来たイケメン君だったという事は伝えている。それはみんなの記憶に残っている程のイケメン率である事を示す。

「うん、イケメンでとても優しかったし、今までの中でも比べ物にならないくらい格好良いいから私はその人かな?」

「いいよねー、そんなイケメン君とウェディング撮影が出来るなんて羨ましい、所でさ、写真は出来上がったの?」

期間限定のデザートを食している伊織がそう呟いた。何故かランキングよりも私とそのイケメン君についての話になっている。

「まだだけどさ、ランキングよりいつの間にか私の話になってない?」

私がそう言うと自分で言って気付いたのか、”そうね確かに”と、有希そう言いながら笑っていた。そして話題は変わり、

「そう言えばさ、今回の歌でふと思っていたんだけどさ、私達って恋愛禁止じゃない?それで思ったんだけど、どんな恋愛をみんな求める?」

そう有希が言ってきた。今回の『恋愛シュミレーション』。今までも恋愛ソングを歌ってきたけど、気持ちや想いを何かに例えたりと正に妄想の中でしかない。勿論今回の歌も妄想に過ぎないけど、こんなにリアリティ溢れる内容は初めてだから多分みんなもそう思っている。だから今回こういった話題が出るのだと思う。

「恋愛ねー、考えた事ないなー。ユキリン自体どうなの?」

なんて私はそう答えた。このまま私の事を話すとボロが出そうなので自然に振った。

「私ねー、歌詞のようなデートも好きだけど、どちらかというと家でゆっくりして、特に気にしないくらいの関係性が良いよね」

「えーそれつまんないくない?」

そういったのは以外にも愛花だ。あ、以外というのは愛花と言えばゲーム実況するから、てっきり賛同するかと思ったからだ。

「ゲーム実況者でもあるのに意外」

私は思った事をそのまま言葉にした。

「それは偏見だよ咲ちゃん。と入っても、あながち間違っちゃいないんだけどさ、私の場合は家だけじゃなくて外も適度に出たいかな?なんでもバランスよ」

そう、うんうん頷きながら答える愛花に対して私は”なるほど”と言う。すると今度は伊織から私に

「それはそうと、咲ちゃん自身はどうなの?さっきは考えとこない的な事な言ってたけど少しもないの?一番歌詞に刺さってた癖に?」

「うぐっ!」

一番痛い所を突かれた。今回の歌詞でメンバーの中では一番の反応を見せいてた私。その私は先程「考えたことない」と言ったもんだから、そこに大きな矛盾が発生している訳だ。言い逃れが出来ないというか…

「何よそれ、真相突かれた様な反応は(笑)。という事はあるんでしょ理想?」

「‥あるにはあるけど…恥ずかしい」

「なんでよ(笑)、別に身内だからいいじゃない?」

「ユキリンの平凡な感じの後だと、なんだか言いづらくて…」

そう。私の場合、ユキリンの様な平凡も良いけど、それよりも何処かに出掛けて、目的に対して一緒に向かって一緒に楽しんで、2人であーだこーだと言い合う、正に『恋愛シュミレーション』の様な恋愛が理想である。もし趣味が合えば、それこそ家でゲームしたり、なんなら最近流行っているカップルゲーム実況なんてやってもいいと思っている。内容的には愛花に近い感じはするけどね。

とは言っても、つい最近まではこんな気持にすらなった事なく、むしろ最初に私が答えた「考えたことない」のが正解だった。だけど今は違う。これも、西君という存在が出来たからだと思う。改めて恋って凄いと感じている今日この頃。

「凄い気になるじゃんねぇ?」

「うん気になる。大体でいいからどんなの?」

伊織に便乗して愛花も食い気味で聞いてくる。まぁさっきも言った通り、あれ程歌詞に敏感に反応してる私だ。逆の立場でも気になる。だけど、恥ずかしさが残るので

「うぅ‥う愛花みたいな感じ?」

恥ずかしさと緊張で声が震えてしまった。

「以下同文的な言い方はずるいぞ」

と、冷静に有希がそう言ってきた。

「だって、今までこんな話して来なかったじゃん?」

私たちは恋愛に関しては全くの無縁。その為、お互いの恋愛事情は気になっていたものの、無縁のあまり聞く意味もなかったのだ。私の言葉に対して伊織が、

「それは咲ちゃん自身が言ったじゃん?歌詞を受け取った時、”これは今までの恋愛ソングとは違う”って。そう言われた後に歴代の恋愛ソングを聞いて確かになって。それに”こういう歌詞みたいの憧れる”って言ったのを聞いて、そういえばみんなの恋愛観を聞いた事ないなーって思ってね。んで、咲ちゃんは正に今回の曲こそが理想なんじゃないの?」

そうだった。歌詞を初めて受け取った時にそんなこと言ったんだった。他二人もそう言えば的な反応を見せる。という事は何?伊織はわかってた上で聞かれたって事?質(たち)が悪いんだけど。私は確認すべく伊織に

「ねぇ、もしかしてだけど知ってて聞いてきたの?」

すると伊織は開き直る様に

「うんそうだよ?あの時は歌詞に対しての感想という感じだったんで、改めて聞きたくて」

「うんにゃろーい」「んぐぁ!」

私は伊織に蚊来るデコピンをすると、いいリアクションが返ってきた。まぁこれを気にシレっと流そうと思ったが、どうやら私のその理由を聞きたい状態に皆入っているので、私は仕方なく話す事にした。

「今までってなんていうかありきたりって言うか、あくまでも妄想の世界で『こうなったらいいなー』的な内容だったじゃん?」

私の言葉に他が相槌をし、私はそれを見るとそのまま話しを続ける。

「でも今回はもうちょっと入り込んでる感じで、言わば付き合っての初めてのデートって感じがして、その初デートで相手が私の為に念入りにプランを考えて来たと考えたらなんだか嬉しくない?内容がリアルだからこそ、凄く新鮮味があるから‥って何よ!?」

私が想いを語り、ふとみんなを見るとクスクスと笑っていた。すると有希が

「フフフ‥だって、歌詞を受け取った時も思ったけどさ、ここまでどっぷり共感するなんて見た事なかったから、凄く珍しいなって思って」

「確かに、どちらかというと咲ちゃんて恋愛に対してはあまり興味なさそうなイメージだから」

有希の言葉で共感したのか伊織が反応する。確かに今までの私は恋愛<アイドルであった。というか、10歳からこの世界に入って来てるもんだから恋愛もくそもない。好きな人は当時居たけど、この世界に入るとなった途端、最初は凄く祝ってくれたけど、暫くしてからその人に限らずみんな私から距離を置く様になっていた。

てっきりみんなが皮肉に思っていたのかと思ったらそうではなく、どうやら話を聞くと、私がアイドルの道に進むとなった時、その噂が学校中に広まったお陰で一足早く、一時的に学校のアイドルになっていた。それもあってクラスの周りからは『特別な人』として近付きずらくなってしまい、いつの間にか距離を置いていたとの事。だから私はその僅かな期間だけ孤独を感じていて、必然的に好きな人とも会話がなくなってしまっていた。

そういう状態のままこの世界に入って今に至ってる訳だから、恋愛の『れ』すら経験した事がない。そう。俗にいう『処女』だ。逆にメンバーの中には、所謂『経験者』というのがシェリミキと嬉々がある。これは丁度rainbowが発足して僅かな時にネットで晒されていた。

しかし会社の意向としては、『モープロに所属してから』を言うから別に何も言わなかった。まぁ、こういった感じで『印象を悪くする為の暇な輩」みたいなのは必ずあるっぽいので、会社もそうだが、本人にも気にしない様にと言っている。

「何それ?私ってそんなイメージだった?」

私がそう言って言い返すと

「うん、今に必死というかね」

改まって有希がそう言った。

「私だって人間だし、興味だってあるさ」

そう言いながら珈琲を飲む。

「フフ、今日は咲ちゃんの意外な一面が見れた。さ!スタジオに行こ?」

「何よ良い感じに纏めちゃって?まぁ良いけど」

有希が良い感じに纏めたことに対して私がツッコミを入れ、店を後にした。


「「お疲れ様です」」

閑話休題し、私たちは午後からのダンスレッスンの為、スタジオに向かった。挨拶をしてスタジオの扉を開けると、マネージャーでありダンスレッスン担当の菊池さんが既に来ていて、初めて見るダンススタイルの服装でいた。

「お疲れ様です皆さん。今日は初めてのダンスレッスンですね、宜しくお願いします」

「「宜しくお願いします」」

と、テンプレートの様な最初の挨拶を済ませると、早速私たちも身軽な服装に着替えて各自ストレッチをする。ダンスはその後だ。

「そういゃ、午前中はどうでした?初めてと言っても、実質午前中が初めてのレッスンでしたよね?」

そう言ったのは愛花だ。

「うん。視たから分かると思うけど、結構アクロバティック系なダンスだから少し難しそうではあったかな?私自身も教えるとなると初めてだから、試行錯誤で教えたって感じ。幸いにもシェリミキさんがそっち系の経験者だったから、助け合いながらなんとか2番までは覚えてもらえたって感じです」

そう苦笑いをして言った。教える立場としての難しさを痛感している様子。今までもダンスは勿論やってきた経験より、最近は一日で覚える事が多かったが、そんなメンバーがフルで覚えれなかったってのは相当難しい事になる。

「予行練習をしてても1番だけ?」

私がそう言った。因みに今回は色々と初めて尽くしの為、予行練習を念入りにと言われていた。

「‥そうなんです。やっぱ画面越しと実物だと、大きな振りは置いといて細かい所がみんなバラバラだったりとかで、そこの修正が長かった気がする。だから今回も覚悟は出来ています」

またしても苦笑いでそう言った。ちょっと我々も覚悟が必要かもしれない。私達はそんな不安な中、レッスンに入った。


ー夕方-

ダンスの方は不安な中ではあったが、菊池さんが午前中に感じた課題を活かして私達に教えた為、午前中とは違って、ラストサビ前のCメロまで一通り覚える事が出来、残りは明日に実施することになる。それ以降はみんなと同じ日にレッスンが5回あってPV撮影的な感じの流れだ。

「「お疲れさまでしたー」」

そう言って私達はスタジオを後にし、帰路についていた。私は最寄りの茶水駅を利用する為に徒歩で。他メンバーは島田さんの車に乗った歌の収録組と合流し、それぞれ帰宅となった。


ー数日たったある日-。

ダンスレッスンや歌なども無事に撮り終え、明後日のPV撮影を残していた。そして今日は前にもちょろっと伝えたけど、私たちの個人のラジオ番組『虹路番組』の収録日。ここで新曲の『恋愛シュミレーション』の初お披露目となる。因みに曲が完成したので、ステージ用と言われるパート事のダンスレッスンは明日から開始となる。実は私達も聴くのは初めてで、記念すべき一回目の担当となったのが私と『魔女』でお馴染みの嬉々である。

「じゃー始めます、3、2、‥」

そう担当者からの合図があると、我々の曲でオープニングが始まる。そしてゆっくり歌が小さくなってから3秒後に私から話し出す。

「さぁ始まりました虹色番組。ここではとあるテーマに沿って私達rainbowがあーだこーだ言い合う10分間の小さな番組です。今回担当するのは私、咲ちゃん事、上原咲楽と?」

「はい、魔女こと、森山嬉々でお送り致します」

そう言ってラジオが始まった。今回のテーマは『新しい事』だ。内容は学生さんや社会人の方は新年度が始まったこともあり、予想以上のメールやお手紙が集まった。そんな中、1通の手紙を読むことになった。

「ラジオネーム、『晴れのち雨』さんよりお便りです。お、正に虹になる条件の1つですね。えー、僕の新しい事と言えば、rainbowファン(晴組)となった事です。‥お、凄いーありがとうございます」

と、時折自身の感情を伝えながら読む。

「それまでは、アイドルという言葉に何処か距離を置いていたというか、偏見を持っていて、可愛い子が居ても、アイドルと分かるとヲタクが集う所と思ってその時点で好きになるのを諦めてました。‥まぁね、まだその風潮はあるから仕方ないですよねー。‥でもある陽キャな友達から一言『好きになるって素敵な事じゃん?それが偶々アイドルってだけで、恥ずかしい事ではない』と言われたのが切っ掛けで、あ、恥ずかしい事ではないんだと思うようになり、それ以来周りにも公言し、その上でしっかりと応援して行こうと決めました。こんな歴が浅すぎる僕でも晴組の一員になれますでしょうか?という事です」

そう読み終えると嬉々から話し出す。

「全然なれるよ!ていうかその人、マジ友達に感謝するべきだよね?」

「うん。むしろその友達は手放さない方がいいと思う」

すると何かに火が付いたのか嬉々が

「確かにそう!個人的にそこから極めるかどうかはその人次第で、そもそも好きに歴は関係ない。それを抜きにして好きになっている以上それで良いし、もうそれは晴組の1員だから自信持ってほしい」

「いゃもう既にこの方は自信持ってらっしゃるから大丈夫じゃない?ていうか凄い熱量(笑)」

すると嬉々は、自身の過去の事を語り始める。

「あーごめんね、今となってはこうやってアイドルになってるけど、私も昔はアイドル好きだった側でね。それが友達にバレた瞬間のあの引き具合、今でも覚えてるんだよね。好きなだけなのにどうしてこんなにキモがれるだろうって、好きなっちゃダメなのかなーって」

「へぇ初耳」

「うん、誰にも言ってないからね。これ聞いて思い出したというか、その時に思ったのが、逆に私がアイドルになろうって決めて今に至る。だから今となっては、こうやってアイドルをやれてるのは、憎たらしいけどその人のお陰でもあるんだけどね。あー私も『晴れのち雨』さんみたいな友達欲しかったなー、羨ましい」

そう天を仰ぐ。それと同時にスタッフより”時間です”というジェスチャーがあり、私は

「そう過去を経験した彼女が言っていますので、自信もって晴組として入部されてください」

「何その纏めよう(笑)」

時間も一杯になり、最後はいつも私達の曲で締めくくる。今日は以前から話をしている新曲『恋愛シュミレーション』を流す日だ。本来は一部を流すのだが、今回は新曲を流すという事で、早めに打ち切る。

「はい、という事で今回は早いですがここまでになります。今日も皆さんから沢山のお便りをありがとうございました」「ありがとうございました」

私のお礼に重なる様に続けて嬉々も言う。そのお礼の後は私が話を続ける。

「最後は私達rainbowからのお知らせです。この度、新曲『恋愛シュミレーション』が5月20日に発売が決定されました!」

その言葉と共に拍手とおめでとう的なBGMが流れた。この操作はガラスの向こう側の製作スタッフさんがされていて、他にもCM入りと明けなどをカウントしたりするから、私は勝手にカンペと呼んでいる。

「凄い、良い音楽を流してくれてありがとうございます(笑)。えーそれを記念してですね、このラジオを聴いて下さっている皆様に、先取りという事で音源をフルでお聴かせしてお別れとさせて頂こうかなと思います」

「お、遂にお披露目ですか?」

嬉々が上手く合わした。

「そうです。実は私達も初めて聞くので、どういう仕上がりか少し緊張している」

「ねー、いつもこの瞬間が緊張するよねー」

そう嬉々は私の心境に同情する。ここで私はある提案を出す。

「だよねー、そうだ!折角なので最後はいつもと違う曲紹介でお別れします?」

「そうだね、逆にいいかも」

そう嬉々とのやり取りをしながらカンペの方が両手で10秒の合図が来た。これは曲入りまで、つまり今回で言うとエンディング迄の秒数を表す。私はそれを見ると

「はいという事でエンディングです。ここまでは私、上原咲楽と?」

「森山嬉々でした」

「それでは聴いて下さい、せーの」

「「恋愛シュミレーション」」

そう言って放送は終わり、エンディングの代わりに新曲の『恋愛シュミレーション』が流された。当たり前だけど全員部分とパート分けがしっかりされている。

曲が終わると二人で歓声と共に拍手をする。因みにラジオは終了しているのでこの部分は乗らない。その後は2人でここが良かった等とマイク越しで話し合い、無事にラジオの収録を終えた。


to be continued…

仮面を被った清純派(アイドル)

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