(この前髪の毛束感、俺カッコイイー)
俺はモールの通路でスマートフォンのインカメに写る自分に惚れそうになった。
さらにワックスを指に馴染ませ、前髪をねじり上げる。
(よし、イケメンすぎてヤッベ)
通路を歩いていると、この俺に見てくれと言わんばかりに女たちが視界に入ってくる。
今年の春から大学生になり、ひとり暮らしも始めた。
高校時代は勉強ばかりだった。
髪も子どもの頃から行ってる近所の床屋で切っていた。
服は親がスーパーで買ってきたやつを着ていた。
でも晴れて志望する大学に入って俺は変わった。
雑誌や美容系配信者の動画を参考に垢抜けを決意した。
美容院で髪を切り、金髪に染めた。
服はモテてるやつのSNSを見て買った。
彼女は今まで一度もできたことはないが、それもあと数時間で終わる。
いや、数分かもな。
垢抜けた俺のお披露目と彼女作りを兼ねて、俺はこのモールに降り立った。
『えっ、カッコよくない?』
どこからか、女の声が聞こえた。
周囲を見る。
前から歩いてくる4人の女子高校生が笑いながらチラチラと俺を見ている。
垢抜けると歩いてて普通にカッコいいとか言われるのか。
まぁ大きい声出ちゃう程のイケメンなのはわかるけど、聞こえてますよ、その会話。
女子高校生もいいけど、あの子たちはちょっと子どもだ。
俺はもっと大人の女がいい。
例えば、ほらそこ。
サービスカウンターでにっこり微笑んでるうっすら茶色い髪の女だ。
制服越しに胸がデカいのがわかる。
おっ、前から歩いてくるミニスカートのやつもいいな。
太ももの盛り上がりがたまんね。
見てるだけでヤりたくなってくるぜ。
『あの人ヤバい、あっちの方もすごそうじゃない?』
(!?!?!?!?!?!?)
誰だ?
今どっかで、俺はイケメンだって、俺のあそこもすごそうだって、声が聞こえた。
俺は周りの女たちを見た。
前からお団子ヘアの女が歩いてくる。
歯が出ていて鼻も低い。
ダメだ、あいつとはヤれない。
『こっち向かないかなぁ?ほんとイケメンだよねー。そそるぅー』
また声が聞こえた。
後ろってことか?
振り向いた。
茶髪のスラッとした女と目があった。
だけど一重だ。
俺は二重のぱっちりがタイプ。
それに細すぎて、なんかソソらない。
ギリヤれるはヤれるが、彼女にしたいタイプじゃない。
女は俺を見ながら近づいてくる。
俺は女に話しかけた。
「これだけイケメンだと、見つめたくなる気持ちもわかるよ」
女は戸惑っていた。
意中の男に突然話しかけられたら、そんなリアクションになってしまうのも無理ない。
「仮に俺とお前が付き合ったとして、並んで歩いたら恥ずかしいだろ?」
女は口を半分開き、どうしていいかわからないといった顔で俺を見ている。
「俺がイケメンすぎるのが悪いんだ。君に罪はないさ」
「ちょっ…」
女は顔を真っ赤にして足早に俺から離れていった。
秒で恋され秒で女をフる俺。
(フードコートでヒマそうにしている俺好みの女を探すか)
俺はエスカレーターに乗って上の階に向かった。
フードコートにつくと家族連れや学生のグループで賑わっていた。
『イケてるくない?』
『みてみてみて!すごいカッコいい!』
(またか)
俺は髪をかきあげ、フードコートを見渡した。
(おっ)
少し離れたところに座っている女2人と目があった。
(あの女たちだな)
女っていうのは正直だ。
さっきの女子高生といい、思ったことを平気で口にする。
「誘ってるの?」
俺は2人に近寄り、テーブルに肘を置いて言った。
1人はベージュ系統でまとめたカフェでラテを飲んでそうなタイプだ。
もう1人は髪にカールがかかった、ややまつ毛まわりのメイクが濃い女だ。
「ラテが好きそうな君は、70点だ」
「え…?」
採点が厳しかったのか、一気に不安そうな顔に変わる。
「眼力のある君は、75点だな」
彼女は何も言わず、驚いた顔をしていた。
「思ったより高得点?だけど残念だ」
「俺とヤれる合格点は、80点以上だ」
俺はそういうとテーブルから離れた。
誘ってくる女とかたっぱしからヤるのも、悪くない。
でもさ、初体験は大切にしたい、それは女も男も同じ、だろ?
俺は納得のいく女とヤりたいんだ。
俺はアパートに戻ることにした。
いくら誘われても俺の初体験にふさわしい女は、なかなかみつからない。
かといってヤりたくないわけじゃない。
一流とは言えないものの、みんなそれなりに良かったじゃないか。
アパートの階段の手前で、背後から靴音が聞こえて振り返った。
(!?!?!?!?!?)
(80…いや90点だ)
ハイヒールを履いた長い脚を黒くうっすら光沢のあるストッキングが彩る。
フェイクレザーの黒いタイトスカートは膝上20センチほどだった。
(顔もモデル並じゃんか…)
女は俺の前をココナッツのような甘い香りを残し、通り過ぎていく。
コンッ
コンッ
コンッ
(うぉお…尻がエロい!)
階段をのぼるたび、尻の肉が左右に揺れる。
女は2階のフロアから、俺の部屋のある方に向かう。
ニコッ
女はドアの鍵を開けると、俺に微笑みかけて、部屋に入っていった。
俺の隣の部屋、あんな美人が住んでたのか。
部屋に入るが、興奮が収まらない。
あの脚、あの尻、胸だってGはあった。
ハァハァ
思い出すだけで、勃ってくるぜ。
『…したい…』
(あ…?)
『さっきの金髪の子と…エッチ…したい』
(あああああ!?)
壁の向こうから、声が聞こえた。
コメント
4件