中「俺は何処で間違えたんだ。」
ヴ「…最初だ。そもそもお前は生まれたこと自体が間違いだったのだ。」
…_____何かが壊れた音がした。
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……そこからよく覚えない。でも気付いたら
Nは死んでて…
”兄さん”が居て
何故か……
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乱「ただいま」
乱歩さんが勢いよく探偵社の扉を開ける。だけれど声音はいつもの上機嫌ではなかった。
国「おかえりなさい乱歩さん…って太宰?!」
太「ぁ……国木田くんニコ」
国「…?乱歩さん太宰は今日早退って…」
乱「依頼をさっさとする為に連れてきた。」
敦「あ、乱歩さん…と太宰さん!?」
かくかくしかじか…
敦「なるほど…そんな事が」
国「でも、ポートマフィアの事も覚えていなかったら不味くないですか?乱歩さん」
乱「ああ、そうだ。だから僕たちでどうにか戻さないといけない。」
太「……………………」
国木田たちが話している時に太宰は真反対の事を考えていた。太宰は実際にその場を見て、実際に言われたのだ。『知らない』と。あの言葉と目で太宰の希望は全てなくなった。それどころか…___絶望した。
(…中也を戻す?無理だ。だって…)
中『ねぇ、あの人』
太「…ッ、」
乱「…太宰」
太「…はい?」
考えていた事がバレたのかと心配して反射的に太宰は返事を返した。その直後、乱歩が息を大きく吸って手を上にした。…時だった。
太「…?!痛った…乱歩さん?!」
乱歩が太宰の背中を叩いたのだ。割と強く。
乱「全く…何時もの太宰じゃないと気持ち悪い!!」
太「…えぇ」
乱歩の推理力にも、力の強さにも驚いたが、「それは流石に無茶」な事には理不尽さを隠せなかった。元から乱歩さんに隠し事はできないのだが。
乱「……絶対戻す!!彼自身の為にも…太宰の為にも!!」
太「……!乱歩さん……!」
乱「まぁ、ね……」
わたしが人を信じようと思ったのは何時までしていなかっただろう。そして心の底から人を救いたいと思ったのは……中也を救いたいと思ったのは初めてだった。
太「……絶対。」
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誰も目に留めない路地裏で。
……冷たい。
先程まで暖かった人は大量の血を流し、次第に感触が硬くなっていく。
ヴ「…よし弟よ。帰るぞ」
中「……うん」
そこに居たのはポール・ヴェルレエヌと大量の血を流していた”物”をコロしたと思われる中原中也。中也は軽く返事をしてから
中「兄さんは先行ってて。後で行くから。」
ヴ「!そうかわかった」
靴がアスファルトを踏んでいく音。次第にその音が遠くなってから中也はもう一度その死体をみた。……あまり情というのは湧かないが矢張り、一つの事がいつまでも引っ掛かっていた。
中「……誰なんだろう。ずっと…あった事があるような記憶が沢山あって……なのに」
それからまた数分、死体を見つめたり、血まみれの自分の首元を触ってみたり。
……それからまた暫くして死体を置いて、冷たく誰も目に留めない路地裏のアスファルトを音をたてながら去っていった。