TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

タイトル、作家名、タグで検索

テラーノベル(Teller Novel)
シェアするシェアする
報告する

私には、今、大切で大好きな人がいる。


私は、中学2年生の夏休み前頃から、担任の白河優輝しらかわゆうき先生の事が好きになっていった。

私はとにかく人と話す事が苦手で、友達は1人も居ない。 さらに家族からは、私のその性格を認めてもらえず「何で喋る事が苦手なんだ!」とか「挨拶くらい大きい声で言いなさい!」などを言われ続けてきた。


しかし、白河先生は私の事を認めてくれた。

2年生の頃の二者面談の時に、家族のことや友人関係の事を泣きながら話した。そしたら先生は「そうなんですね。辛かったね。大丈夫。」と言ってくれた。

多分、それが好きになったきっかけだと思う。


そのお陰なのか、3年生でも担任として持ち上がってくれた。


それからは、私達は沢山話して、仲良くなっていった。 憂鬱だった毎日が先生の優しさで私は学校に行く事が楽しくなった。

それと同時に先生の事も沢山知っていった。実は先生も話す事が苦手で、職員室ではいつも1人でいるということ。年齢や誕生日、名前の由来まで…。


そして高校入試前には、特別に勉強を教えてくれたり、面接練習をしたりした。


だから高校には無事合格した。

合格発表の時に先生は「良かったね!自分の事のように嬉しいよ!」と言ってくれた。


そんな私ももうすぐ卒業。


私は卒業式の時にしたいことがある。

それは…

「先生と写真を撮って、連絡先を交換して、この’好き’という気持ちを伝える事。」





卒業式当日

教室に入り、『もうこの教室に来るのも無いんだ…』と少し切なくなりながら席についた。



少しして先生が入ってきた。

久しぶりのスーツ姿に私は見惚れてしまい、笑顔で先生を見つめた。


最後の出席確認を終え、廊下にでて番号順に並ぶ。私の名前は山水凛やまみずりんなので一番最後。なので後ろに並んだ。

先生は一番前に居る。


少しして列が進んだ。 しかし先生はそのまま止まっていた。

『誘導するんじゃ…?』と不思議に思いつつ先生の横を通り過ぎる瞬間、「凛さん」と先生が小声で話しかけて来た。


私は一瞬で頭が真っ白になり、「何ですか?」と言う。

「式が終わった後、丘の駐車場に行く事になってるんだけど、行って写真を撮り終えたら、僕と校舎の方に戻って欲しいんだけど…良い?」

「うん」と答えた。

ふと2人で前を見ると、列が見えなくなっており、周りも静かになっていた。

「うわっ!置いて行かれた!怒られちゃう!」

「とりあえず行かなきゃ!」と2人でパニック状態になりながら体育館へ急ぎ足で向かった。


体育館へ向かうと、入口で待機している状態だったので、安心したとともに2人で胸を撫で下ろした。

先生は列の前に行く。


少しして体育館内へ入場した。

校長先生の話や卒業生合唱などを終え、退場する。


卒業証書は体育館の後ろでもらって出るという形だったので、私も後ろで卒業証書を先生から貰う。しかし親なども沢山来ていたので、何か言われたりすることはなかった。



外へ出て、再度番号順の列に並ぶと、多分他学年の先生と思われる人に昇降口前まで誘導され、「先生達が来るまで待っていてください」と言われた。

みんなはわいわい楽しそうに喋っているけれど、私は友達が居ないので、地面を指先で触ったり、時々周りを見渡したりした。


とにかく私は白河先生の言葉が気がかりだった。

やはり期待してしまう。

ずっと考えていると、だんだん身体が熱くなってくる。


あれこれ考えていると、各クラスの担任達が来たので、丘の駐車場に行く事に。


丘の駐車場とは、正門を出て少し坂を登ると、右側にある広い学校来客者専用駐車場。しかし、坂を登った場所にあるのでみんなは「丘の駐車場」と呼んでいた。



各クラス記念の集合写真を撮る。私は勿論白河先生の横に並んだ。親たちのスマホやカメラのシャッター音が鳴り響く。

その後は自由解散になった。

白河先生は私に「ちょっと待っててね」と言い、生徒達と写真を撮ったりしていた。

私は如何にも親を探しているふりをして先生を待つ。


約10分経ったくらいの頃に、白河先生が急いで私の所へ来た。

「ごめん、待たせたね。」

「いえいえ、全然良いですよ。」

そして、私のスマホで先生との2ショットを撮り、 「じゃあ、戻ろうか」と駐車場を出た。

「卒業生の名前呼びの時、めちゃくちゃ緊張してたんだよね…」

「全然!素敵です」とゆっくり歩きながら会話する。

しかし私の脳内は、期待している。

期待し過ぎて少し気分が悪くなったような感覚になった。


校舎に着くと、「こっちに来て」と言われ、グラウンドの方に行く。

グラウンドの丁度中心くらいの一番広い所で先生は止まる。私も止まる。


先生は「今までありがとう。ずっとずっと凛さんに支えられてきたよ」

「いやいや全然。私こそ先生に救われた部分が沢山あるのに…」

「だから…もう…、先生と生徒の関係はやめよう。」

「!?」

「その代わり…僕は…凛さんの事が好きです。」


やはり期待通りだ。けれど素直に言葉にできないほど嬉しかった。

「そして…凛さんって家に居場所が無いって言ってたよね…。」

「うん…」

「だよね…。だから、僕の家に来て良いよ。」


嬉しい言葉が先生の口から沢山出てくる。

「でも…そんな事まで…」

嬉しいのに、癖で控えめに応えてしまう。

「良いよ。全然。休みの日には、色んな所にお出かけしたりもしよう。」

もう…これは…後を待っていても無いチャンスだ。と思い、「はい!」と嬉しそうに答えた。


この作品はいかがでしたか?

190

コメント

0

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store