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ワンクッション
顔面蒼白となったエーミールは、グルッペンと視線を合わせることなく、呆然とした表情を浮かべている。
「はっはっはっはっ!そうかそうか!そういうことだったんだな、エーミール!」
勝ち誇ったように笑うグルッペンとは対極に、エーミールは顔を伏せ歯ぎしりをしていた。
グルッペンはエーミールの耳元に口を近付け、愉悦をもってささやく。
「安心したまえ。私はこのことを、他言するつもりはない。無論、貴様次第だがな」
「……クソ、が」
「正体を表したな、エーミール。だが、口汚いことなど、些細なことだ。さあ、上に乗ってくれたまえ」
エーミールは苦々しげに舌打ちをすると、グルッペンの肉棒と自分の尻に、包帯と一緒に持ってきたローションをぶちまけた。
「冷たいな」
「痛いよりマシだ。どうせ、コンドーム着ける気ないんだろ?」
「男同士でも、着けた方がいいものなのか?」
「当たり前だ。本来はクソの出口である、ケツ穴に突っ込むんだぞ?性感染症だけじゃない。他の感染症の可能性もある。まあ、貴様のチンポが腐ろうがもげようが、俺の知ったことではないがな」
悪そうな含み笑いを浮かべ、エーミールがグルッペンの上に跨がろうとすると、グルッペンの表情は固まり、手を差し出して静止する。
「ちゃんと着けます。着けてください」
「素直でよろしい」
エーミールは顔を歪めてニヤリと笑うと、薬箱からコンドームを取り出すと口で封を切り、グルッペンの復活した肉棒に装着した。
「おぉ…。こんな感じなのか。…少しキツいか?」
「ローションも塗ったし、すぐ慣れる。本当は、俺の方も中を洗浄したりほぐしたりと準備が必要なんだが…、今の貴様に、そこまで我慢できるとは思えんからな」
「結構大変なんだな」
「当たり前だ。女と違うし、夢まぼろしの精霊でもない。そもそも、男の身体は、男を受け入れられるような構造ではない」
「なるほど。次から気をつけよう」
「次があれば…、なッ」
エーミールはゆっくりと、グルッペンのモノを自身の中へと挿れていき、苦しそうに浅く早い呼吸を繰り返す。
「…ッ、はっ、あ、……あぁ…ッ」
「ああ…、いい、いいぞ…エーミール…ッ」
「まだ…ッ、動く……なッ!」
充分に慣らしきってない穴への挿入は、先だけでもキツく苦しい。いきなり動かれたら、裂けてしまう。
ゆっくりではあるが、グルッペンの上で腰を上下に動かすことで、徐々に慣らしていく。
「ふっ…、は、あ、…あぅ…ッ」
「もう……、いい、か…?」
「まだ、だ……ッ!」
急いてくるグルッペンに、エーミールは何度も「待て」と繰り返す。何度も腰の上下を繰り返し、堅かったエーミールの入口が次第に馴染んでくるのが、グルッペンにもわかってきた。
「っは…、エーミール…もう、いいだろ…?」
「……ッ、まだキツいが…仕方ない。いいだろう。動いていいぞ」
言うが早いか、グルッペンはエーミールの中に激しく突き上げ始めた。
「!!はっ!やりッ、すぎ、…ッ、だッ!」
「止まるワケ…ッ、ないだろッ!」
「ぅあッ!やっ、激し……ッ!あ、ひッ!!」
突き上げるたび、艶声を上げて身悶えるエーミールの姿に、あのキャンプで交わった精霊の姿か、グルッペンには重なって見えた。
間違いない。
エーミールこそ、あの時の精霊だ。サボテンが魅せる幻覚よりも、更に蠱惑的で人を陥れる毒を持つ、そんな精霊なのだ。
グルッペンはエーミールのシャツに手を掛けると、今度は首や手を抜いて、部屋のライトの光にエーミールの素肌を露出させた。
「……ははっ!やはりだ!やはりエーミール、キミは……ッ!」
「……ッ!やめろッ!言うな!」
エーミールの白い素肌を、縦横無尽に走る無数の鞭の跡。古い歯形や爪痕も、あちこちに残っている。
そして、わき腹に微かに残っている、新しい爪痕。グルッペンは完全に確信を得た。
「いつから……、いや、何人…何十人、男の相手をしてきたんだい?」
「やめろッ!!」
「鞭の痕を見ればわかるよ。男に身体を委ねるのは、キミ自身が望んだことではない、とね」
「……ッ!」
「だがキミは、その膨大な知識と賢さ故に、それすらも利用してやろうとした」
「楽しかったか?キミの掌の上で踊る、馬鹿な大人達を見ているのは」
「だッ、黙…れ……、あぐぅッ?!」
奥にある勘所を激しく突かれ、エーミールは身体を仰け反らせ喘いだ。
グルッペンはエーミールと繋がったまま身体を起こして体勢を変え、エーミールの身体を仰向けにした。床へと押さえ込むと、グルッペンはエーミールの耳元で甘く低い声で囁いた。
「それがキミの本性でもあり、魅力でもある。貴様のその叡智と魅力、すべてを俺のために使え。エーミール」
「……ッ!っざっけん……、あぅッ!んンッ!」
奥を突かれるたび、身体をしならせ甘い悲鳴をあげるエーミール。普段の冷静沈着でどこか澄ました紳士然としたエーミールから、艶やかで蠱惑的な娼婦への極端な変貌ぶり。
このギャップに、どれだけの男達が、その蠱惑の糸に囚われたことだろう。
自分も気を付けないと、同じ轍を踏むことになるだろう。
グルッペンは頭の中で何度も己に言い聞かせ、何度目かの射精をエーミールの中で放った。
コンドームから溢れそうになるほど射精しているのに、エーミールの中でグルッペンの雄はすぐに勃ちあがり固さが回復していく。
グルッペンが何度か射精していたのは、エーミールもうすぼんやりとだが、気付いていた。それなのに、すぐに復活してくるのは、若さ故か初めての興奮故かは、わからない。いつ終わるか底知れない狂宴に、エーミールは恐怖を覚えた。
「しつ…ッ、こいぞ…ッ!いつ、まで…ッ!ぅ、あぁ!や、ぁ…ッ!」
「キミが俺を忘れられなくなるまで…だ」
「クソ、が…ッ!いい加減…ッ、あ、っく…ッ!終わらせ、ろッ!」
限界が近いのは、エーミールの方だった。
グルッペンの言う通り、身体目当てで寄ってきた男共を完全に落とし操るためにも、自分が先に達してしまうわけにはいかなかった。
ましてや今回の相手であるグルッペンには、絶対に付け入る隙を与えてはならない。
持ち前の洞察力と行動力で、エーミールの企みすらも絡め取ってくる、出会った中で一番鋭く狡猾な男。
彼に隙を見せないためにも、余力は残しておきたいのに。
「ひぅッ!は、ひッ!あっ、やっ、だ…ッ」
脳が溶けそうだ。
突き動かされるたびに、激しい電流を浴びたように痙攣させられる。
「エーミール…、エーミール…」
グルッペンの上擦った声も、エーミールに届かない。
「ひぁ!…あ、ん、んふ…ッ、んンーー……」
意識の残滓が、達してのたうつ最低な自分の姿を確認する。
意識が、途切れそうだ。
ダメだ。
ダメ……だ……。
何とか意識を保とうとするが、感覚は飛び飛びになっている。
いつの間にか、尻を埋めていた肉棒は抜かれ、男の気配すらない。
どこ…に…
意識が霞む。身体が弛緩して、動かない。
朦朧とする五感から、聴覚がかすかな機械音をとらえた。機械音の正体がシャッター音と気付くのに、それほど時間を要しなかった。
「……消せ……」
かろうじて絞り出したエーミールの言葉に、グルッペンはニヤリと笑って答える。
「安心しろ。誰にも見せるつもりはない」
カメラを構え、エーミールのあられもない姿を、グルッペンは何度もシャッターを切り、フィルムに納めた。
「それに、データではなく、銀塩写真だからな。消せないよ」
「……フィルムを…よこせ…」
「断る。だが、安心しろ。私個人の鑑賞用だ。他人に見せる気は、さらさらない。約束する」
「……よこせッ!」
ガタガタの身体に鞭を打ち、エーミールはふらふらと立ち上がると、猛然とグルッペンに飛びかかった。だが、エーミールの足元もおぼつかない突進は、グルッペンですら簡単に躱すことができた。
それでもエーミールは必死だった。
どんなに些細な事でも、この男に弱みを握らせるわけにはいかない。いつ、どのような形で、エーミールに災いがもたらされるかわかったものではない。
「よこ、せッ!」
「おっと」
再び飛びかかってきたエーミールの鼻先で、グルッペンはカメラを引っ込めた。
バランスを崩したエーミールは、ソファーテーブルの上に置いてあった灰皿やタバコ等をぶちまけて、みっともなく床に転がっていった。
「キミらしくない必死さだな、エーミール。だが、無駄に足掻くキミの姿も、嫌いじゃない」
歪んだ笑みを浮かべて言い放つグルッペンではあったが、エーミールが手にしていたモノを見て、余裕ぶった顔は一瞬で青ざめた。
先ほどエーミールが盛大に転んだ時にテーブルから落ちたのは、灰皿とタバコだけではない。エーミール愛用のジッポライターとライターオイルが、エーミールの手に握られており、注ぎ口を壊されたライターオイルは、どぼどぼと床に溢れていた。
「……おい。止めろ、エーミール」
「さすがグルッペン。察しがいいですね」
「真っ先に貴様が丸焦げになるぞッ!いいのか!」
「構いませんよ!貴方と…そのフィルムも全て焼けてなくなるのでしたらねッ!」
エーミールはそう言って高笑いすると、何の躊躇もなく、ライターの火をつけて手から離した。
ライターの火がオイルまみれの床に落ちる直前に、グルッペンの手から投げられたカメラがライターに当たり、すんでのところで火災を免れた。
「ナイスコントロールです、グルッペン。メジャーリーグでも目指したら、いかがですか?」
「……無茶がすぎるぞ、エーミール」
エーミールはニヤリと笑うと、グルッペンが投げたカメラの中からフィルムを取り出し、ライターオイルに浸す。オイルまみれのフィルムを灰皿に投げ入れ、ライターで火を着けると、フィルムはジリジリと燃え上がった。
「で、逃げる算段はついたのか?」
「何のことですか」
タバコに火を着けず、口の中でもてあそびながら、すっとぼけた態度を取る。
「とぼけなくてもいい。セックスの最中から、私から逃げる算段をいくつも考えていたんだろう?」
「当然でしょう。今だって、こうしながら、いろいろ考えていますよ」
「随分素直に白状するもんだな」
「……脳内シミュレーションの時点で、すべて貴方に潰されていますけどね」
「無駄と悟ってくれたか」
「諦めは悪い方なんですよ、私は」
「それは素晴らしい。せいぜい足掻いてくれたまえ」
グルッペンは笑ってそう言うと、エーミールが脱ぎ散らかした服を投げ渡した。
「取り敢えず服を着たまえ。今のキミのその姿は、あまりにも扇情的すぎる」
局部を露出させて座り込んでいる姿に、エーミールは大して羞恥心を抱いていなかったが、どうもグルッペンの眼には毒だったようだ。
「また襲いかかられても困りますからね。ありがとうございます」
「ハッキリした記憶の中では、初めての性行為だったからな。ついがっついてしまって、すまなかった。次はもう少し、優しくするよ」
「次……ですか」
二度と御免だ。
聞き入れられないであろうその言葉を何とか飲み込み、エーミールは苦笑いを浮かべ、シャツを着る。
「思えば私も、若い人は初めてかもしれませんね。ですから、せめて貴方に改善して欲しいことが、あるのですが」
「何だね?」
「このマンションには、住人専用のジムがありましてね」
【続く】