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E p i s o d e .2
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「あ”ーー、海水浴行きたーい…….」
「行けばいいじゃん、一人で。」
最近毎日のようにしてるこの会話。
どうやら菜瑚は海水浴に行きたいらしい。
そんなに行きたいなら一人で行けばいいのに、と。私はつくづく思う。
何故かって? そりゃ私はそういうのは苦手だからだよ。泳ぐのも得意じゃないし。
だから一人で行けばっていつも返すと、
「だーかーらぁ、私は依吹達と行きたいって言ってんのぉぉ。」
て、不貞腐れたように返してくる。
私達が一緒に行けない理由はそう難しい話ではない。別に私らに怪我やら病気やらがある訳じゃないし。
「そんな事言ったって、仍が忙しいの知ってんでしょ?」
「んー、そうだけどぉ….」
理由は仍だった。仍の家はお寺で、休み構わず巫女の仕事があった。
それに、仍のお寺では毎年夏休みに祭りをやっていた。それだからか、周りが海水浴に行っている時期はいつも寺にいた。
だから一緒には行けなかった。
すると、先程まで静かに私らの話を聞いていた仍が口を開いた。
「その事なんだけど、」
仍は少し苦笑してから話を続けた。
「今年、夏祭りが一週間ズレることになったのよ。」
「だから、」
そう言いかけたが、次の菜瑚の言葉によって仍の言葉は遮られてしまった。
だがまあ、仍が言おうが菜瑚が言おうが内容は同じだろう。
「じゃあ、今年は海水浴行けるってこと!?」
「みんなで!」
仍はええ。と、微笑み頷いた。菜瑚は満更でもない程に喜んだ。
まあそれもそうだ。
私達は中学生からの仲で、いつも一緒にいた。
そんな中、私達は今の今まで海水浴に行った事がなかった。
仍の寺では毎年夏休みに夏祭りが2日間にかけて行われる。
そのため、ざっと2週間程前から準備が必要なため、周りの同級生が海水浴に行っている時期には3人で出かけられる事は全くなく、夏祭りに一緒にまわるくらいだ。
まわるといっても、仍は神楽だったりで忙しいけど。
まあ、そんな話はさて置き、今年は海水浴に行けるのだ。菜瑚はともかく、仍も楽しみなんだろうな。
そう思ったが、仍は少し浮かない顔をしていた。
「仍、浮かない顔だけど、何かあったの?」
私がそう訪ねると、はっと、息を吹き返したように首を振ったが、ただね。と話し始めた。
「私、小学校以来海水浴やプールに全く行っていなくて、水着がないのよ。」
少し照れた様子で言った仍は目を逸らした。
無理もない、仍の家はそんな家柄じゃないのはわかっていたし。
すると、菜瑚が何か思いついたように提案を持ちかけた。
「じゃあさ、今週の日曜水着買い行こーよ!」
まあ、そんなとこだろうとは思った。菜瑚は水着を買いに行くことを仍に提案した。
確かに、菜瑚ならそういう物には詳しそう。
「いいわね。是非行きたいわ。」
仍も嬉しそうだった。
「ん、行ってら〜」
「えー?何言ってんの、あんたも行くんだよー!」
「え、は…?私も行くの、?」
まさか私も行くとは。いや、うん、まあ流れ的に私も行く流れだったけども。
別にさ、水着買いに行くだけじゃん?
私知らんよ、そんな水着の種類なんて。
「そりゃ行くでしょ〜。ね、仍も来てほしいよね?」
菜瑚は当然とも言うように仍に話を振った。
「そうね。依吹ちゃんがいいなら来てほしいわ。」
何この断れない状況。
最初から知ってたよ、行かなきゃいけないのわ。でも私が行っても何の需要もないって。
「まあ、いいや、行く。」
「やったね〜。笑」
何がそんなのいいのやら。
はぁ、とため息をつくと仍があっ、と声を出して手をパンっと叩いた。
「そうだわ、折角だし海水浴、朔良君達も誘いましょう。」
「おー!いいね、それ!」
「うん、いいんじゃない?」
この提案には私も同意。
ハルとかはともかく、朔良に関しては仍が誘えば行きそうだし。
「よし、じゃあそうと決まれば誘いに行こー!」
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放課後__。
「あ、ハルー!」
授業が終わり、門まで3人で歩いていると、前の方に見慣れた3人の姿があり、菜瑚は走っていった。
私と仍は呆れたように後を追い、琉唯達のいる所に向かった。
「夏休みなんだけどさ、6人で海水浴行こーよ!」
3人の元につけば、菜瑚が早速誘っていた。
「え、でも仍先輩忙しいんじゃ……」
この3人は仍が忙しいのは知っていた。だからか、菜瑚から声をかけられたハルは動揺していた。分かりにくいが、遠回しに気遣っているのだろう。
すると、私の隣にいた仍が嬉しそうに口を開いた。
「それがね、今年夏祭りが一週間ズレたから行けるようになったのよ。」
「ね!だから一緒にどーかなって。笑」
仍が喋り出し、行けるという事を話すと、先程まで琉唯達の後ろで黙って話を聞いていた朔良が仍に寄ってきた。
「先輩行くなら俺行きたい。」
「あら本当?嬉しいわぁ。」
仍以外には絶対見せないような笑顔で行きたいと言ってきた朔良の頭を、仍は来てくれるのが嬉しいようで撫でていた。
私は改めて、何故コイツらは付き合わないのだろうと思った。というより、何故仍は好かれているというのに気づかないのだろうと思った。
「んー、俺も行こうかなぁ!」
だろうな。来るだろうね、アンタは。
私が来る限り、絶対行くと思った。
そんな当然という事を考えていると、琉唯に話しかけられた。
「先輩行くんすよね!?」
「うん。行く。」
「じゃあ俺も行くー!」
知ってる。と、冷たく返せば「先輩冷たーい!」と返ってきた。
そしてそんな会話を聞いて、菜瑚がハルを誘っていた。中々了承してくれないのだろう。菜瑚も段々不貞腐れてきている。
「ねーー、皆来るって言ってるよ?」
「ハルも行こーよぉぉ!!」
「………..」
ハルはやっと決心したのか、溜息をつき、口を開いた。
「分かりました。折角ですし、行きますよ。」
まあ少し上から目線な気もするけど、菜瑚は嬉しそうだしいっか。
これで、3人とも行くと決まり、6人で海水浴に行く事になった。
まず、仍の水着買いに行かなきゃな。
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