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幻覚...精霊と交信...合法昔話で合ってますか?o(`・ω´・+o) ドヤァ…!
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ワンクッション
「ネイティヴアメリカンの体験キャンプに行かれませんか?」
大学生活の準備が一段落した時に、グルッペンは、とある人物にそう声をかけられた。
自宅と大学間は、国内とはいえ飛行機の距離である。家族とは別れて暮らすことにはなるが、同じ大学に行く学生とのルームシェアが決まっていたので、寂しくなることはないだろうと、父親は言っていた。
とはいえ、グルッペンは元来それほど社交的な方ではない。じっくり本を読み、思考に更けることの方が好きだったから、正直ルームメイトなどいらなかった。
まあ、ホームパーティなどと称して騒ぐような頭の悪い奴なら、策を巡らせて叩き出せばいいだけの話だ。
どちらにしろ、家族すら煩わしいと思っていた若き思想家にとっては、大学進学はいい機会だった。
そんなこんなで準備が整ったところに誘われた、体験キャンプの話。
正直、興味はなかった。
だが、どうやら新しいルームメイトがそのキャンプに申し込んでいると聞き、グルッペンは少しだけ興味が湧いた。
両親だけでなく、知り合いが押してくるルームメイトという相手がどのような人物なのか。自分自身の目で確かめるいい機会だと、グルッペンは考えていた。
ネイティヴアメリカン体験キャンプには、老若男女、さまざまな人々が参加していた。
その中で、グルッペンと同年代っぽい人物は、四人。
恋人同士という男女のカップル。観光旅行でやってきたというアジア人男性。そして、E国からやってきたという背の高い男性。
恐らくルームメイトになろう人物は、カップルかE国人かのどちらかだろうと、グルッペンは推測した。そして、ルームメイトとなるならば、できれば煩わしいカップルよりも、アジア人かE国人の方がマシかと思った。
十人ほどの参加者とツアーコンダクター、案内人の部族の人々と挨拶を交わし、これから一週間のネイティヴアメリカンの暮らしを、適当に楽しむことにした。
「いやー、楽しみだなー」
「そうね、楽しい日々になりそう」
「まずは馬に乗って、居住区の散策をするそうですよ」
アジア人男性が、引き連れられた馬たちを指差し、流暢な英語でグルッペン達に伝えた。
「乗馬のできる人は希望によっては、単独でもいいそうです。乗れない方でも、熟練のガイドが一緒に付きます」
「私は乗れます」
乗馬の心得があるグルッペンがそう言うと、部族の青年がにこやかに一頭の馬を連れてきた。
「この子は、シム。大人しくてよく言うことを聞く、いい子だよ」
「ありがとう。よろしくな、シム」
グルッペンが馬の首を撫でであげると、シムと呼ばれた馬はブルルッといななくと、グルッペンに顔を刷り寄せた。
「ははっ。人懐っこいいい子だな」
ツアー参加者がおおむね馬に乗り終わり、そろそろ出発という話が出てきたが、一組の中年夫婦に宛がわれた馬が暴れだし、夫婦は馬に乗れず周囲は右往左往していた。
「どうした?」
先導の部族の男が近付いてきた。
「どうにも、ご機嫌ナナメのようで、あぶみにすら乗せてくれないんだ」
「……困ったな。スーは滅多に暴れたりしないんだが」
ツアーコンダクターと部族の男が困った顔でいると、E国人青年が自分の馬を降り、二人の元へ駆け寄ってきた。
「代わりましょう。私が、その馬に乗ります」
「え?いやしかし、スーは今、機嫌が悪いようだし…」
「大丈夫です。あのご夫婦を別の馬にご案内して、先に行ってください」
「そ、そうか?じゃあ、お二人はあちらに…」
ツアーコンダクターに導かれ、夫婦が別の馬に案内され、ツアー客達は散策に出掛けてしまった。
「……痛かったね。ごめんね」
E国人青年がそう言ってスーの前足を撫でると、スーは一度だけいなないて、青年に顔を刷り寄せた。
「……キミも見てたのか」
部族の青年が少しだけ苦い顔をしてそう言うと、E国人青年も小さく頷き、スーの頬を撫でる。
「この子、あのご婦人に蹴られてましたね。そんな人間、乗せたいなんて思わないだろう。ねえ、スー」
「……我々もツアーが貴重な収入源である以上、お客には強く言えない。この子達にも、辛い思いをさせている」
「怪我をしていては大変だ。スーは私と一緒に、ここで皆の帰りを待とう」
「しかし、貴方もツアー参加者である以上は、イベントに参加しないと…」
「私はスーといたい。それではダメですか?」
青年が慈しむようにスーの顔を撫でると、スーは嬉しそうに鼻を震わせ、青年に擦り寄る。
「それは……。いえ、スーは貴方がとても気に入ったようです。乗るように言ってますよ」
首を使ってぐいぐいと青年を押すスーに、部族の青年も笑ってスーの思いを伝える。
「んふっ。ありがとう、スー。でも、無理はしないようにね」
「乗ってあげて。その方が、スーも喜ぶ」
「では、よろしくね。スー」
青年がそう言うと、スーは足を屈めて青年が乗りやすいような姿勢を取った。
「ふふっ。この子は本当に賢い子ですね」
「その分気難しいけど、いい子だよ」
青年がスーに跨がると、スーは嬉しそうに歩き始めた。
「スーは、散策ルートを覚えている。走ればすぐに追い付くだろう」
「ありがとう。行こう、スー」
青年がそう言うと、スーはツアー集団がいるであろう方角に向かって走り出した。
青年とスーが草原を駆けていると、途中で馬に跨がっていた同じツアー客の青年が待っていた。グルッペンである。
「他の参加者は先に行っているが、あっちに見えるように、そう遠くはない」
「待ってくれていたのですか?皆と先に行けばよかったのに」
「そうしてもよかったが、この子…シムが君の馬を気にしていてね。なかなか動こうとしなかったから、一緒に待つことにしたんだ」
「なるほど。ありがとう、シム」
「私には?」
「……ふふっ。キミにも感謝しなければね。ありがとう。……えっと」
「グルッペンだ。グルッペン・フューラー」
「エーミールです。一週間、よろしくお願いします。ミスター・フューラー」
「グルッペンでいいよ、エーミール」
エーミールと名乗った青年と共に、グルッペンはツアー客の集団に向かって、馬を走らせた。
馬の件以降、グルッペンとエーミールの距離は縮まり、何かというと二人で組んで行動することが多くなった。
「エーミールは、どうしてこのキャンプに?」
何気ない疑問のつもりで、グルッペンはエーミールに尋ねた。だが、振り返ったエーミールの表情は、非常に怪訝なものだった。
「……知っててこのキャンプに申し込んだんじゃないのかい?」
「……?どういうことだ?私がこのキャンプに来たのは…両親の勧めだ」
「……なるほど。いい両親をお持ちですね、キミは」
そう言うエーミールの目つきは、若干どこか侮蔑を含んでいるように見え、グルッペンは内心怒りを覚え、ムッとした表情を見せた。
「そう言うエーミールは、両親にこのキャンプに行くことを告げているのかい?」
「……私には、両親はいません。後見人はいますけどね。この国に来たのは、ビジネスのためなんです」
「それは……」
グルッペンは言葉を失った。
年のほぼ変わらないであろうエーミールに両親がいないこと。この国に来た目的が仕事であること。
驚愕と羨望と落胆が、グルッペンに一気に押し寄せた。
「……知らなかったとはいえ、悪かった。他意はなかったんだ。許してくれ」
「許すも何も……、気にしなくていいですよ。私も言い方が悪かった。申し訳ない」
「しかしエーミールはすごいな。その若さで仕事を持っているとは」
「……養父の仕事の一部を受け継いだだけです。これからもっと、自分の手で事業を大きくしたい。この国に来たのは、そのためです」
「素晴らしい!」
グルッペンは、素直に称賛の言葉を上げた。
「キミのビジネスの成長を祈るよ!いやはや、キミは本当に大したヤツだ、エーミール」
「……ふふふっ。ありがとう、グルッペン」
その笑顔には、どこか何かを含んでいるような感じではあったが、グルッペンは気付いている様子はなかった。それよりグルッペンの心を占めていたのは、落胆の気持ちだった。
エーミールには言ってないが、両親がこのキャンプを勧めたのは、未来のルームメイトの視察のためである。
ビジネスのために来たエーミールと、旅行の一環であるアジア人は、ルームメイトとはなり得ない。
となれば、残るは
グルッペンは、仕事もせずに木陰でガールフレンドとイチャイチャしている男に目をやり、そして落胆した。
アイツか。
いかにもグルッペンの苦手なタイプの、典型的な頭の悪い若者像だった。
だが、早目に知ることができたのは、ある意味よかったと考えを切り替える。すぐにグルッペンは、あの男をグルッペンの生活環境から追い出す算段を考え始めた。
その夜。
この日最後のイベントは、精霊との交信と称したキャンプファイヤーと音楽会だった。
素朴で単調な音楽を耳にしながら、ゆるやかに立ち上がる炎を見つめ、グルッペンはなるほどと納得した。
単調な音楽と炎の複合作用で、見ている者をトランス状態にするヤツなんだな。まあ、単純な仕組みだ。
たまにはこういう遊びに付き合うのもいいかなと思い、グルッペンは状況を楽しむことにした。
音楽を聞いているうちに、次第に気分が高揚してきた頃、グラスに注がれた飲み物が回ってきた。
「これは?」
グルッペンが尋ねる。
「精霊の恵みだ。飲め」
ガイドがそう言うと、グルッペンの隣に座っていたエーミールも、にこやかに笑って言葉を続ける。
「一口だけでいいんですよ、グルッペン。終わったら、私にももらえませんかね」
エーミールにも後押しされ、グルッペンは訝しく思いながらも、精霊の恵みとやらを口にした。
まずい!
口に含んだ瞬間、グルッペンは液体を吐き出しそうになったが、何とか一口だけを頑張って飲み込んだ。
能面を貼り付けた顔と震える手でグルッペンは隣のエーミールに杯を渡すと、エーミールは苦笑混じりに杯を受け取った。
「やはり不味かったんですね。急かして申し訳ない、グルッペン」
「いや…。と言うか、知ってたのか?」
あまりの青臭さと苦さと得も言われぬ珍妙な味に、つい少しだけ吹き出してしまったグルッペン。エーミールは苦笑を浮かべつつもいたわるように背中を擦り、杯を受け取る。
「噂だけは。では、私もいただくとしましょう」
不味いと知りつつも、エーミールはためらうことなく杯をあおり、隣に座っていたアジア人青年に杯を回した。
「なるほど。これでフェニチルアミン系アルカロイドの感覚が、体験できるんだな」
エーミールが嬉しそうに、何やらボソリと独り言を漏らしたのが、グルッペンの耳に届いた。
「何だと…?」
不穏な単語を耳にしたグルッペンが、エーミールに声をかけたその時、ガイドが参加者に立ち上がるよう促した。
精霊との交信のダンスを行う。皆、精霊の導きのままに、動いてくれ。
ガイドの合図と共に、参加者達は飛んだり跳ねたり、思い思いに動き始めた。
次第にトランス状態が深まって行くと、グルッペンは突如宇宙を感じた。
何が起こったのか、一瞬わからなかった。が、すぐにエーミールの言葉を思い出し、これはトランス状態とアルカロイド毒が見せる幻覚だと納得した。
なるほどこれは、体験してみないと理解できない世界だ。
グルッペンは幻覚の中で、美しい精霊達と戯れ、魂で触れ合った。
高揚した気分で精霊達と触れ合っていると、突如精霊がグルッペンのズボンを脱がして、性器を愛で始めた。
は?え?
戸惑いはしたものの、グルッペンは精霊のなすがまま、動けずにいた。
『これは夢だ、グルッペン』
精霊はグルッペンの耳元でそう伝えると、グルッペンの勃ちあがったイチモツを口に含んだ。
「……うっ」
よく見れば、精霊はエーミールに似ている気がした。精霊のエーミールが、艶かしい表情でグルッペンを見つめ、グルッペンを咥えこんでいる。
扇情的な光景に、グルッペンはただただ息を飲んだ。
精神的高揚だけでなく、肉体的な刺激も相まって、グルッペンは初めての快感を得た。
『んふ……っ。初めてだったのかい?悪かった』
精霊の声…?いや、この声は、まごうことなきエーミールの声だ。
「エーミール…なのか……?」
『んふふ…っ、違うよ。悪戯好きの精霊の仕業だよ。まあ、目覚めるまで、もう少し愉しんでくれたまえ』
一度萎えてしまったグルッペンのイチモツは、再度舌と掌の刺激を受けると、ムクムクと固さを取り戻した。
『さすが…若いだけあるな。回復も早い』
「な、に…?」
ボンヤリとした意識の中で、それでもグルッペンは事態を理解しようと理性を振り絞る。
エーミールの姿をした精霊が、グルッペンの上に跨がり、柔らかく温かい何かでグルッペンを包み込んだ。
『あっ、あぁ…』
精霊が、艶かしい声をあげる。
「っは、エーミール…」
たまらずグルッペンも声をあげ、精霊の腰を手で掴み、爪を立てた。
精霊の脇腹に立てた爪に、グルッペンは力を込める。指先に、皮膚を破り体内に食い込む感覚が、じんわりと伝わる。
精霊が小さな呻き声を上げた気がしたが、続く声に掻き消された。
『……違う。私は…キミが見ている幻覚…だ……』
「……どっちでもいい…。キミが精霊だろうと、エーミールだろうと……」
グルッペンは、自身を包む温かい何かの中へと、二度三度と突き入れた。
『あッ?!あ、ン…ッ』
精霊が、エーミールの声で艶かしく喘ぐ。
「エーミール……、エーミール……」
『ち、ちが…ッ、あ、あふッ!う、ンふ…ッ!』
突き上げるたびに甘い声で泣き、グルッペンを締め付ける感覚に、グルッペンは幻覚作用がもたらす効果よりものめり込んでいき、更に腰を激しく突き上げた。
『は、ひ、ぃッ!ぃ…あッ!んンッ!!』
精霊が鳴く。エーミールの声で。
「ふっ!う…ッ!エーミール…エーミールッ」
『んッ、ンッ……う、んンーーーッ!』
グルッペンは精霊のエーミールに、ありったけをぶちまけた。
『クソ…が……』
ずいぶんと口の悪い精霊の怨嗟を聴きながら、グルッペンの意識は深淵に沈んだ。
【続く】