とある小さな漁村に、青年がいた。 水色のぼさっとした髪型で、
名を「浦島 千春」
といい、村一番の漁師である彼は、 銛の扱いがうまかった。 その白い目は太陽のように明るく、 透き通っており、快活とした性格もあって 村の人々からとても好かれていた。 そのおかげで村の子供からも慕われており、
「 今日はどんな魚を獲ったの? 」と、
聞かれたりするのが、彼の小さな喜びだっ た。 そんな千春が、いつも通り魚を獲った帰 り、 村に一人、長い黒髪の少女が訪れた。 少女は、
「 浦島千春って人、いる? 」
と聞き、千春が名乗り出ると、
「 ついてきて 」
と人気のない海岸へ連れて行かれた。 千春が一体何の用で、と聞こうとした そ の時、 千春より一回り小さい少女は、 素早く腰の鞘から小刀を抜き、 千春の首筋を切った。 突然の痛みに千春が慌てて首を抑えると、 その隙に少女は千春の足に自分の足を 絡めるようにして引っ掛けて転ばせた。 すかさず馬乗りになり、 少女は千春をひたすらめった刺しにする。 薄れゆく意識の中、 千春が最後に見たのは、 何食わぬ顔の少女だった。
次に目覚めたとき、
既に空は暗くなっていた。
千春は仰向けの状態からあわてて起き上が り、あたりを見渡す。
千春は、自分が生きていることに驚いた。
夢か、と思ったのだが、
場所は変わっておらず、更には少女も 目の前にいるのだから、これは夢ではな い、と気付かされた。
だが、次に出た言葉は、
思っていることとは反対に、
「 ‥‥夢? 」
という一言だった。
少女は気怠そうに言う。
「 残念ながら、 現実よ 」
「 そういうのいいから、 早く正体現しなさい、 面倒なの 」
「 正体? なんのことだよ? 」
「 は? あんた“死呪人”でしょ? そういう作戦? なら失敗よ、それとも今度こそ死にたい? 」
わけがわからない。「 死呪人 」? いきなりやってきて、殺されて、 責められている千春にとっては、 納得いかないという気持ちより、 戸惑いのほうが大きかった。
「 待ってくれ! 何の話だ? 俺はなんで生きてる? 君は何者だ? わけがわからない! 教えてくれ! 」
少女は、信じられない、といったような 呆れた表情で言う。
「あなた本気で言ってるの? まぁいいわ、その芝居付き合ってあげる‥‥ いい? あなたは呪われた存在‥ 死ねない存在‥ 人ではなく、 死そのものとなった者よ‥‥ 私は、あなたのような輩を殺し、 撲滅するために、 ここへ来た」
千春は、説明されてもわからない事実に、 頭が追いつかなかった。 この少女が嘘を言っているようには、 とても思えなかったからだ。
「 待ってくれ、 俺が死ねない? 俺は今まで死んだことなんてないし、 ましてや殺す? なんでそんな事する必要が? 」
「 あー‥面倒ね‥ これ以上あなたの茶番に付き合ってられないわ 」
そう言って、少女が再び腰の鞘から 小刀を抜こうとしたときだった。 なにやら村のほうが騒がしいように感じ た。 千春は少女を置いて、村の方へ走った。 少女もそれに続く。村では、 やたら高級そうな服を着た男が一人、 その横に屈強な男二人がいた。 村長と揉めているようだ。
「 ですから、 困るんですよ、 税を徴収できないとなると 」
「 そんな事を言ったって、 ないものはありません! 先日も納めたばかりじゃないですか! 」
どうやら、村の土地を持っている地主が、 村に過度な税金を課しているようだった。 千春も、それについてはよく噂で耳にして いた。
「あまりに滞納するようでしたら、 みせしめに何人か痛めつけてやってもいいんですよ? 」
「 そ、そんな!やめてください! 」
そう言って村長は地主の男にすがりつくが 振り払われ、やれ、という一言で、 屈強な男二人が村長を押さえつけ、 地主の男が剣を村長に振り下ろしたとき、 少女が地主の男の手首を蹴り、 剣を手元から飛ばした。
「 貴様!何をする! 」
「 何って‥ 蹴りよ。 」
「 くそっ! そのガキをやれ! 殺しても構わん! 」
千春はまずい、と思い止めに入ろうとしたが、 次の瞬間、少女はその体を俊敏に動かし、 屈強な男二人の頭を空中で弧を描くように 蹴り飛ばして、 身一つで倒してしまった。
「 な、 なんだ貴様! ただで済むと思うなよ! 覚えていろ! 」
そう言って、逃げ出した地主だったが、 慌てて走ったからか、つまづいて資材を高 く積んである場所に突っ込んでしまい、 崩れてきた資材に潰されて、死んだ。 あまりにあっけなく、情けない最後だった。
当の少女は、
「 あーらら、 おまぬけさん 」
と悪態をついていた。 人が死んだというのに、 その場に湧き上がったのは 悲しみの嘆きではなく、 自分たちを虐げていた者がいなくなった、 喜びの歓声だった。
コメント
3件
亜人のパクリかな?
続きが気になりますね!!