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テラーノベル(Teller Novel)

ハヤト

兄貴、大変だ

アキト

どうした?

ハヤト

家の裏にある池なんだけど…

アキト

あぁ、行くなよ絶対

ハヤト

それが

アキト

まさか、行ったのか?

ハヤト

ハヤト

本当は行きたく無かったんだよ!

ハヤト

でも、同じクラスのタクヤに池の話しをしたら

ハヤト

見てみたいって言うんだ

アキト

バカだな

アキト

で?どうした?

ハヤト

見て満足してた

ハヤト

で、帰ろうとしたら

ハヤト

足を滑らせて

アキト

落ちたのか?

ハヤト

ハヤト

落ちた!!

ハヤト

上がって来ない!!

ハヤト

どうしよう兄貴!!

アキト

落ち着け

アキト

多分、タクヤは

アキト

向こうの世界に行ったんだ

ハヤト

ハヤト

それって迷信だろ?

アキト

いや、言い伝えだよ

アキト

昔、亡くなった祖母に聞いたんだ

アキト

アキト

あの池に落ちたら

アキト

もう一つある世界に辿り着く

アキト

でも、必ず戻って来るらしい

ハヤト

聞いた事はあるけど…本当に?

アキト

本当だよ。だから、あの池には行くなって言われてるんだ

ハヤト

ハヤト

そうなんだ…どうしよう…

アキト

大丈夫

アキト

タクヤは帰ってくるよ

ハヤト

…うん

ハヤト

兄貴、今日は合宿だっけ?

アキト

あぁ、合宿だよ

ハヤト

そっか…水泳部って厳しいもんな…

ハヤト

ねぇ、本当にタクヤ大丈夫かな?救急車とか呼ばなくて大丈夫かな?

アキト

タクヤは大丈夫だって

アキト

それよりお前

アキト

今日、塾の日だろ?

ハヤト

あ、うん

アキト

ちゃんと行けよ

ハヤト

…うん

一週間後

ハヤト

兄貴、今日も合宿?

アキト

あぁ、何かあったか?

ハヤト

ハヤト

タクヤが…

アキト

タクヤ?お前のクラスの?池に落ちた奴か?

ハヤト

うん

アキト

何があった?

ハヤト

あの池に行けって言うんだ

ハヤト

行って見てみろって

ハヤト

俺、タクヤが怖くて

アキト

アキト

なるほど

ハヤト

タクヤ、やっぱり池に落ちてから変だよ!

ハヤト

今日も池の話しをしたら豹変したんだ

アキト

池の呪いかもな

ハヤト

え?

アキト

だから、言い伝えだよ

アキト

池の向こうの世界から呼ばれてるんだ

ハヤト

ハヤト

そんな…

ハヤト

どうしよう兄貴!!

アキト

大丈夫

アキト

アキト

すぐに正気になるさ

ハヤト

そうなの?

アキト

あぁ、絶対だ

ハヤト

うん、わかった…

ハヤト

ハヤト

でも、不安だよ

アキト

ハヤト…大丈夫だから。家に帰ったら、またお前の話しを聞くよ

ハヤト

約束だよ?…じゃあ、これから塾に行ってくる

アキト

あぁ、ちゃんと勉強しろよ

ハヤト

言われなくてもやるよ

ハヤト

最近、先生が変わったんだけど

ハヤト

優しい先生なんだ。平田先生って言うんだけど

ハヤト

学校の話しとかも聞いてくれて

ハヤト

相談にも乗ってくれる

アキト

へぇ、良かったな

アキト

今回の事も相談してみろよ

ハヤト

うん!そうする!!

二週間後

ハヤト

兄貴

アキト

ん?

アキト

どうしたこんな時間に

ハヤト

どこにいるの?

アキト

明日、東京で大会だから泊まりなんだ

ハヤト

ハヤト

嘘だよ

アキト

ん?なんで?

ハヤト

今日、塾だったんだ

アキト

うん

ハヤト

平田先生と兄貴の話しをしていて…

ハヤト

おかしいって思った

ハヤト

もう、ずっと会えてない

ハヤト

合宿なんて嘘だ

アキト

アキト

そっか、やっとだな

ハヤト

え?

アキト

で?嘘で?俺はどこにいると思う?

ハヤト

ハヤト

池だ

アキト

池?

ハヤト

家の裏の

ハヤト

兄貴は池に落ちたんだろ?

ハヤト

池の向こう側の世界にいるんだろ?

アキト

アキト

なるほどな

ハヤト

言い伝えによれば

ハヤト

必ず戻ってくるって言うけど

ハヤト

兄貴は向こう側から

ハヤト

まだ戻ってきてないんだ

アキト

アキト

じゃあ

アキト

行ってみろよ

ハヤト

え?

アキト

確認してみろよ

ハヤト

…何を?

アキト

今、池の前に俺はいる

アキト

さぁ

アキト

見てこいよ

ハヤト

ハヤト

……わかった

アキト

ハヤト

アキト

ハヤト

ハヤト

あぁ

ハヤト

兄貴

ハヤト

嘘だよ

ハヤト

嘘だ

アキト

どうした?

アキト

アキト

何が見える?

ハヤト

ハヤト

ない

ハヤト

ハヤト

池がない

ハヤト

なんで?

ハヤト

なんだよこれ!!

ハヤト

池が、、、

ハヤト

もう、兄貴帰って来れないじゃん

ハヤト

兄貴、もう帰って来れないじゃんか!!!!

アキト

あぁ、帰って来れない

ハヤト

ハヤト

そんな

ハヤト

兄貴!

アキト

俺は池に落ちたのか?

ハヤト

え?

ハヤト

アキト

俺は池に落ちたのか?

アキト

いつから俺は居なかった?

アキト

どうしてタクヤは、お前に池を見ろなんて言ったんだ?

ハヤト

ハヤト

それは

アキト

お前はもう分かっている

ハヤト

ハヤト

やめろ

アキト

お前はもう思い出してる

ハヤト

やめてくれよ

ハヤト

お前は誰だ?

ハヤト

誰なんだよ!!!

アキト

アキト

君の家の裏には、最初から池なんて無い

アキト

君が自分で作り出した産物だ

アキト

君に初めて会った時に君から聞いた『言い伝え』

ハヤト

アキト

あれは君の空想だ

ハヤト

ハヤト

何で…

アキト

タクヤ君が池に落ちたのも

アキト

君の空想だ。そんな事実は無い

アキト

タクヤ君だけは、他のクラスメイトと違って、君に真実を見てもらいたかった

ハヤト

なんだよそれ…

ハヤト

アキト

君が池の言い伝えを話すと

アキト

クラスメイトは皆、君に話しを合わせた

アキト

だが、タクヤ君は違った

アキト

そんな池は無いと、君にしつこく言った

ハヤト

アキト

君の深層心理はタクヤ君が邪魔だった

アキト

だから空想の中で池に落ちた事にした

アキト

僕も君の話しに合わせて、タクヤ君は池に呪われた。という話しをした

ハヤト

アキト

君に刺激を与えないように

アキト

だけど、長いカウンセリングの中で君は徐々に思い出していった

ハヤト

アキト

もう

アキト

大丈夫だね?

ハヤト

ハヤト

平田先生…

アキト

アキト

そうだよ

アキト

思い出したんだね

ハヤト

ハヤト

俺は…

ハヤト

そうか…

ハヤト

そうだったんですね

アキト

うん、君の言動を心配したご両親が僕の病院を訪ねて来たんだ

アキト

でも、君は最初のカウンセリングを嫌がって暴れてね

アキト

カウンセリングではなく、塾って事にしたら君は信じて通ってくれた

アキト

でも、君の症状は重かったから、普段も監視する必要があった。だから…

アキト

君のご両親からアキト君のスマートフォンを借りて、お兄さんとして、君に連絡をしていた

ハヤト

ハヤト

ハヤト

思い出してきました

ハヤト

兄は

ハヤト

亡くなったんですね

アキト

アキト

そうだね

ハヤト

ハヤト

水泳部のプールで…溺れて…あんなに泳ぎが上手かったのに…なんで…なんで…なんで

アキト

アキト

水…溺れる…

アキト

そのイメージが

アキト

不気味な池を連想したんだね

ハヤト

ハヤト

あぁ、、、俺、、、

ハヤト

兄貴、、、

ハヤト

兄貴

アキト

アキト

せめて向こう側という世界で生きていて欲しい…

アキト

その気持ちはとても良く分かるよ

アキト

でも、そろそろ帰っておいで

ハヤト

ハヤト

…先生…

アキト

アキト

向こうの世界に行っていたのは君だよ

アキト

そろそろ帰ろう

ハヤト

ハヤト

先生…

ハヤト

辛いんです

ハヤト

兄貴を…失いたく無かった

アキト

うん

アキト

そうだね

ハヤト

兄貴は俺より素晴らしい人間で

ハヤト

死んではいけない人間で、、、

アキト

うん

ハヤト

俺、兄貴に会いたい

ハヤト

会いたいです

アキト

うん

アキト

でも、

アキト

君のご両親も

アキト

ちゃんと君に会いたいと思っているよ

ハヤト

それは

アキト

両親もクラスメイトも君の友人のタクヤ君も

アキト

前みたいな君に会いたいと思っているよ

ハヤト

ハヤト

はい

ハヤト

でも

ハヤト

俺は

アキト

ゆっくりで良い

アキト

ゆっくりで良いから

ハヤト

ハヤト

…先生

ハヤト

でも

ハヤト

俺はまだ

ハヤト

あの世界に居たかったんです

ハヤト

あの、向こう側の世界に…居たかったんです

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